谷千鶴(CLUB KARMA)
アンダーグランドももちろん大事だけど、そこにちょっとメジャー要素が無ければ駄目だからね。
★エリアガイジンっていうのはどういったお店だったんですか?今で言うクラブだったんですか?
T:まあどう言ったらいいのかな。クラブって言えばクラブだけど、DJ'sバーとも言えるし。イベントもやってて、イベントは結構過激なことをやってたんですよ。今でこそタトゥーショーとかあるじゃない?DJが回して、その場でタトゥーを彫る、みたいな。そんなことを当時からやってたり。私はSMクラブとか行ったこと無いけどSMクラブの人に頼んでタトゥーのショーとパンクのバンドとSMのショーを一緒にやったり。変わった濃いイベントをやってた。
★現場に復帰したと言うか、お子さんが高校になった時にそういうクラブをやり始めたのには何か理由があるんですか?
T:ん〜っと、まあその時っていうのはテクノの始まりみたいな頃で、それのきっかけを作ってくれたのがケンハラダ。ケン君が携わってくれてた。今のテクノの東京とのコネクションを彼が作ってくれたのね。DJブッキングも手伝ってくれたり。そこから自分がテクノを面白いと思ったし、そこに向けてシフトしていった感じ。今のカーマはロックも何でもオールジャンル的になって、言ってみれば個性の無い箱になってきたのは確かなんだけど、その時はテクノの箱で、今でもカーマはテクノの箱だと思ってる人もいるみたい。だから一番初めのイメージっていうのはすごく重要なんだな、って。もちろん私もテクノが嫌いじゃないし、大好きな音楽だけど、今はテクノばっかり聴いてるわけじゃないので。今は東京から見た時にカーマ=テクノ箱、っていう風に思ってくれてるみたいだし、そういうのはありがたいよね。
★そうなんですね。
T:だから一番初めの人のイメージってすごく大事だと思う。悪いイメージでも勝手に良いようにとってもらえることもあるし。お店だってアーティストも演出も必要だと思うのね。
★そうですね。じゃあエリアガイジンが・・・
T:3年くらいかな。
★3年くらいやって、それがそのままカーマになって感じなんですか?
T:そう。あそこは1階にファミリーマートが入ってて、上には女の人が働いてるバーだったり、ホステスクラブ、違う意味の"クラブ"ね。そういうのが入ってて若い子がたまり過ぎて追い出されたの(笑)
★そうなんですね。
T:今のカーマを出るとファミリーマートがあるでしょ?あそこにみんな座るじゃない。エレベーター降りてきたら「何で若い子がこんな高級な所に座ってんねん!!汚いわ、あっち行って!!」って追い出されたのよ(笑)
★(笑)
T:ほんとよ(笑)。だけどね、新地も変わりましたよ。12年前はクレームの嵐だった。「なんで新地にこんな汚い子が来て座ってるんや!!」って。でも50過ぎの大人の酔っ払いの方がタチ悪い場合もあるわけじゃない?
★そうですよね。
T:でもカーマにはすごい数に人が来るわけじゃない。この前調べたら・・・何人だったかな、とにかくすごい数の人が結婚式の2次会とクラブイベントの平日で・・・まあ1ヶ月で4000人くらいはあの地下に入ってるんです。ん?もっとやったかな?カーマはレギュラーを大切にしてて、今は土曜と時々金曜しかレギュラーは無いけど、150人くらいは入るし、スヌーザーなんかは軽く350くらい入ってるわけじゃない。近くのレストランだったり、他のお店の人であったり、それだけの人が周辺に来て、高級なお店じゃなくても、ラーメン屋だったりお花屋さんだったりにお金を落としてる。だから6年くらい前から近くのレストランなんかは今で言うショップカードを持ってきたりして。今でこそ嫌がられてないけど、8年くらい前まではすごく反感を買ってた。だから1時間に1回は掃除をするとか。そういうことがマニュアルの中に組み込んでた。ちゃんとそういうことやってれば近所の人たちも怒るに怒れないでしょ?それまでは大変だった。
★そんな過去があったんですね。
T:うん、若い人から見たら北新地っていうのはあくまで北新地だけど、違う意味では高級なエリアじゃない?
★そうですね。やしきたかじんが飲みに来る、っていう(笑)
T:そうそう(笑)。まあでも今では新地も気楽な居酒屋もあるし。すごく変わってきたから、私たちも楽になってきた。感謝はされてるかはわからないけど、嫌がられてない、っていうのは事実なのよ。
★そうですね。あの場所っていうのは、もう一回やりたいと思った時に空いてた、っていう偶然の部分が大きいんですか?
T:あのね、まずクレーム多くて一度閉めるときに、周りを探してたのね。まあ予算の中で探すから見つからなくて。従業員のこともあって、あのビルの9階がたまたま空いてて、まあスタッフもすぐ仕事がしたい、っていう希望があったので、同じビルの9階に15坪くらいのカウンターに15人くらい座れて、ボックスに15人くらい座れるところがあって、あのカテゴリーは何て言うのかな。まあみんなカーマが閉まってるのを見て9階まで遊びにきますよね。お金をかけないで椅子を全部取っ払って、カーテンもイベントの乗りでデコレーションしてるから、それはそれで面白くて。音楽もガンガンかかってるわけではなくて、今度は話をする場所だったから、それはそれでみんな気にいって。それも充分に従業員の給料は出てた。今カーマがあるビルってバブルの時に建ててるから保証金もすごく高いし家賃もすごく高いのね。3年間くらい10階建てのビルに3店舗くらいしか入ってなかったの。そら入りっこ無い値段だったのよ。そこでとりあえず地下を見せてもらって。地下は誰もお店を作ったことのないスケルトンの状態だったので。3年は閉まった状態で。開けたらすごく空気が澄んでたの。だから「ああ、いいな」って思って。大きくはないけど、やっぱり地下って印象としては・・・私は霊感とかもないし、本能的に好きだな、って思ったの。お店によっては何となく気配を感じたりするけど、そんなのも無かったから。そこから交渉していって、家賃に関してはすごい冒険だったんだけど。前と同じような内装にするとちょっとやって行けないと思って。その時にクラブを守るためには平日にも力を入れて、結婚式の2次会にも力を入れて、そうすると今のカーマのデザインになったわけよ。
★なるほど。
T:本来とは順番がちょっと違ってくるんだけど、クラブを守るために平日に結婚式の2次会に力を入れ過ぎて、結局クラブの帯イベントが金曜日と土曜日になってしまったの。まあそれも必然な流れかな、って。
★ミナミに作ろうとは思わなかったんですか?やっぱり新地とか梅田だったんですか?
T:ん〜、あんまり、何も無かった。ミナミだから嫌とか、ミナミに作りたいとか、何も考えなかった。まあミナミは自分で遊びに行く所、って思ってるから。それにキタの方が淡々と出来ると思わない?ヌーンとかもそう思わない?淡々とっていうのは・・・、変な言い方したらみなさんいろんなカタチでクラブをやってると思うのよ。例えばスポンサーがいてて、お店を作ってオペレーションしていくのがビジネス、って言う所もあるでしょ?お金はなくても好きでやってる所もあるし。ビルの1室が空いてて、これだけの家賃を払ってくれたらやっていいよ、っていう所とか、いろんな所があると思うのよ。ヌーンとカーマは数少ない純粋に自分の力でやってるクラブだと思うのよ。そういう意味でキタでは淡々とやれるのかな、って。頑張ってやってても他の人から「来月で辞めて」って言われたら辞めなくちゃいけない環境のクラブだってあるじゃない?それって辛いでしょ?やっぱりヌーンでもマイペースでやってるし、それは良い意味でメジャーでもあるし、アンダーグランドでもあると思うのよ。
★そうですね。
T:アンダーグランドももちろん大事だけど、そこにちょっとメジャー要素が無ければ駄目だからね。今の音楽シーンって、例えば10年前だと、ある程度のギャラも集客って予想出来たと思うの。昔のマハラジャとかね。でも今はDJ1回のギャラなんてレコード代にもならないと思うわ。一生懸命やる子にとってはね。だけど自分が頑張って音を作って、レーベル作って、ちゃんとやってれば最低限の生活は出来る、っていうカタチが15年くらい前にスタートして、確かに夢は出来てきたと思うの。みんながみんなじゃないと思うけどね。ある程度頑張って素質のある子じゃないと駄目だけど。カタチにしていける子。例えばイギリスに行ったとする。その時に名刺を持って行ったって駄目。DJにとっても名刺はCDだったりテープだったりするから。それが名刺代わりだから。大手のレコードショップでも1枚より3〜4枚並ぶ方が良い訳だから。っていうことはリリースもないと駄目だし。そういう意味では苦労しても報われる時代にはなったと思う。音楽で。
★なるほど。そういったシステムが出来上がってる、と。
T:そう、出来あがった。それは例えばDJから入って、DJならDJでずっとスペシャルで行けばいいと思うけど、DJは名刺がリリースだから、そういう時代にしっかり突入しいてるから。そういうカタチでしっかりやれる子が生き残っていくと思う。
★例えばお父さんに「音楽じゃ飯は食えないぞ」って言われても、やり方によってはそうじゃないんですね。
T:まあ素質が無ければ全然駄目だけどね。
★そうですか(笑)。
T:(笑)そうよ。大阪から東京に行ってやってる子もたくさんいるし、みんな苦しいかもしれないけど、そういうことってみんなに夢を与えてることになるじゃない?
★そうですね。ではそれぞれのクラブにたくさんの色があってやり方があって、っていう中でカーマをやっていく中で一番重要視してると言うか、価値を置いてる面というのはどういったところなんですか?
T:ん〜とね、6年ほど前までは私は自分がやってることがすごく好きだったし、バランスも結構良かったと思うのね。でも今って、「パーティーが出来ればそれで良かったね」みたいなところがあって、ん〜・・・上手く言えないんだけど、満足感が少ないかもね。やっぱり自分が楽しいと思えなかったらお客さんも多分楽しくないと思うし。今のカーマはちょっと平凡になりすぎたかな。だからもうちょっと自分も遊ばないといけないし、もっと面白いことを見に行かないといけないな、と最近は少し恐怖を感じてる。
★そうですか。
T:何か、最近は"プロ的な"目でしか見ないから。ちょっと駄目やね。
★やっぱり遊びに行った所でインスピレーションを沸かしてそれを仕事に落とし込む、みたいな感じですか?
T:そうね。もちろん私一人じゃ限界があるのでスタッフの力もあるんだけど。まあカーマで一つ言えることは、私はカーマ以外にもいろんな仕事をやってるんだけど、私はカーマを一番好きなお客さんやと思ってるから。経営者だとは思ってない。だから灰皿も変えれるし、大掃除も参加出来るし。たまにキッチンも入るし。カーマのファンの経営者と言うか。その辺が少し変わってるかな。
★なるほど。じゃあカーマは他の事業とは少し違う思いがあるんですね。
T:やっぱり好きで始めてるからね。好きじゃなかったらとっくに潰れてると思うし。赤字の時でも自分でお金を投入してきたし。でも今は最初とは違うカタチでカーマは走り出してるし、何て言うか、クラブのカテゴリーはすごくショートになってるし、まあもう私じゃなくてもいいかな、って(笑)。ちょっと言葉は難しいけど、もう私が経営する必要はなくなってきたかな、って思う。自分が本当に好きなことをするには、それはカーマでは表現できないかも、っていう思いがある。他にも好きでやってる子もいるし、私の個性だけでは出来ないからね。本当に好きなことは他に作らないと駄目な状況に入ってきてる。
★そうなんですね。話を聞いてると"自分のやりたいこと"みたいなのが生まれ続けてる感じなんですけど、それはどこから生まれてくるんですか?
T:それは音楽の好きな人と喋ったり、そこからちょっとしたヒントをもらったり、「あ、それカタチにしたいな」って思ったり、「それにはどうしたらいいかな」とか。
★なるほど。滞ることなく新陳代謝してる感じですね。
T:やっぱり面白い子もたくさんいるじゃない?でも今カーマも年齢層が高くなってるから、もっと若い子と喋らないと分からなくなる。音楽のことも。私も音楽業界のアンモナイトみたいになってきちゃってる(笑)
★(笑)
T:それじゃあかんなー、って(笑)。周りには良いお手本も悪いお手本もあるからね。何かそんな感じがするね。みんなある程度自分が好きなことが出来て、過ごせて、それに携わった縁がある、っていうのはすごく大切にしないと駄目よね?中々そんなことないもんね。
★そうですね。
T:私いつもそう思うのね。そういう出会いって本当に大事だと思うの。面白い人間には良い出会いが待ってると思うの。そういうのに感謝して。本当にそういう出会いがあるから、不思議と。
★そうですね。では多岐にわたって色々お話を聞かせてもらいましたがそろそろ・・・
T:実りの無い話でしたが。
★いえいえ(笑)。何か最後にこれを読んでる人でもいいですし、カーマによく遊びに来てくれる人にでもいいんで、何かメッセージがあればお願いします。
T:まあ良いお友達をつくりましょう。ほんとに。
★そうですね。それに尽きますね。
T:本当に大事だからね。
★今日は本当にありがとうございました。
T:いえいえ、とんでもないです。ありがとうございます。
