田中フミヤ

田中フミヤ
田中フミヤ
1990年代初頭にそのDJとしてのキャリアをスタートさせて以来、自由で鮮 やかな感覚によってテクノというフィールドにおけるまったく新しい地平を常に切り 拓いてきた唯一無二の存在。その自由で独創性に満ちた感覚は、彼が自らオーガナイ
ズするパーティ「CHaOS」を始めとした国内外での精力的なDJとしての活動やFUMIYA TANAKA、INDIVIDUAL ORCHESTRA、KARAFUTOといった名義の下に行っているプロダクショ
ンワークなどにおいても等しく息づいている。
特に近年の彼のDJにおける、作為的で予定調和的な要素を徹底して排除し、その場で しか発生し得ない自発的な空気と強烈なグルーヴのうねりを誘発させるというシンプ ルで明確な意識を伴ったプレイはかつてどのDJも成し得なかったであろう表現の高みに到達しつつあるものと言っても決して過言ではない。
1993年に立ち上げられた田中フミヤ自身のセルフレーベルTOREMA RECORDSも既に10周 年を数え、2005年春には半野喜弘(Cirque/PROGRESSIVE FOrM)との共同運営となる新レー ベルop.discもスタートし今後の新たな活動の広がりにさらなる期待と注目が集まって いる。
「これがテクノちゃうか」みたいなことが基本にあって、それに基づいてやってるんで。
アーティストは大きく二つに分けることが可能である。一つは自分の作品を主義主張のツールとするアーティスト。その代表とされているのがジョンレノンで あり、ボブ・マーリーであり、レイジ・アゲインスト・マシーンであろう。彼らの音は常に確固たるイデオロギーと共に存在し、直接的にメッセージを持つこ とが多い。
そしてもう一つはそのクオリティーだけを追究するアーティスト。つまり個人の主張を作品に入れないアーティストである。彼らはただ一点、「その曲のクオ リティーをあげる」ことだけを正のベクトルとする。そこにジャーナリズムが意味や価値を付加し、よりイデオロギッシュに捉えるのは危険とさえ感じる。そ う、多くのアーティストは曲をかっこ良く作ること以外には「別に何も考えてない」のだから。
その代表とされるのが田中フミヤというアーティストではないだろうか。それを証拠に、彼は「別にそんなに何も考えてないんやけど・・・」、「そこはそん なに意味はないよ。」といったようなことを言う。確かにそうなのかも知れない。しかし不思議なことに、彼の音は歴然と“主張たり得る音”として耳に残 る。それ故に彼のプレイは我々の心を掴んで放さない。田中フミヤこそが無意識に事を起こす確信犯なのだ。そしてその姿こそが最も優れたアーティスト像な のかも知れない。
リリースのタイミングではないからこそ聞けた、これまでの軌跡と今後の展望。
★7月のchaos以来の大阪ですよね?大阪っていうのはやっぱり地元感っていうのがあるんですか?「帰ってきたぞ!!」みたいな。
fumiya tanaka(以下f):やっぱりありますね。友達も多いし。
★ロケッツでのchaos以外で大阪でやるっていうのはあまり無いですよね?
f:ほぼ無いですね。
★そうですよね。去年のサターンとかデカ箱のフェスのようなものを除いたら聞いたことが無くて、今回sunsuiに来るっていうことでびっくりしてたんですけど、今回isoleeと共演することになった経緯を聞かせてもらえますか?
f:元々はね、sunsuiの人が僕を呼びたい、っていうことでロケッツでブッキングをやってる人を通して話が来たんですね。で、sunsuiの人がkarafutoでやってほしい、っていうことだったんで。その意図は聞いてないんですけど。isoleeが来る時に、タイミング的にも丁度いいんじゃないかな、っていうことで。まあそんなに断る理由も無いし。
★じゃあ大阪はロケッツ以外はしない、っていうわけではないんですね。
f:何かね、そういう風に思われてるみたいですけど、全然無いんですよ。呼ばれれば全然やるんで。それでも色々条件とかもあるんで中々難しいですけど。呼んでもやらへん、っていうイメージはあるみたいですね(笑)
★そうですね(笑)。そういうイメージは大阪の子は持ってるかも知れません。
f:まあやっぱり自分のパーティーのスケジュールがあって、そこから回してるから。どうしてもそこが優先になっちゃうから。今回はちょうど期間もあったし、karafutoやし。そんなにkarafutoではやってないから。
★なるほど。今「karafutoやし」って仰ったんですが、一時期と比べるとkarafuto名義でDJをなさることが減ってると思うんですが、そんなこともないんですか?
f:そんなこともあると思います。
★karafutoって昔からの田中フミヤ名義のアグレッシブなダンストラックっていうより、もっとジャズ寄りの"音"にフォーカスしたものだと思うんです。クラブっていう面ではニーズが少ないのかな、って。特に今はお客さんもたくさん入るでしょうし、"ガツガツ踊らせる"田中フミヤ、っていうのが求められてるのかな、って思うんですけど。
f:どうなんやろね。まあkarafuto名義で自分のパーティーを持ってない、っていうのがまず回数が減ってる理由としてまず一つあると思うのね。それまでは『mask』っていうパーティーでコンスタントにやってたけど。あとはニーズに関してはどうなんやろう。音楽ってもういろんなジャンルがいっぱいあるでしょ。パーティーにしても自分達でオーガナイズしてやっていく、っていうのが中々難しくなってきて。そんなんでやりにくい面とかもあるんかも知れへんけど。まあそういうのがあるんかな。
★じゃあkarafutoの名義でDJも出来れば定期的にはやっていきたい、ってことですか?
f:まあレギュラーでパーティーも始めようかな、って思ってて。今年始めようと思ったんやけどちょっと無理そうで。来年にはやろうと思ってる。
★そうなんですね。今フミヤさん自身が認識されてるか分からないですけど、日本ではクリックハウスの代名詞的な存在になってるように僕達は感じてて。特に今田中フミヤ以外の名義がたくさんあるじゃないですか?そういうものが出来た頃から"テクノ"っていうよりは"クリックハウス"とか"エレクトロニカ"っていうようなモノに移行してるように思えるんですが。そういう意味でisoleeっていうアーティストとやるのはkarafutoだからこそ出来ることなのかな、って思ったんです。
f:どうなんやろう。まあオーガナイズしてる人がそういう風に決めてやってるんでね。僕の方でオーガナイズしてやるパーティーではないんでその辺の意図っていうのはちょっと解りかねるんやけど。
★では初期の頃から大阪でパーティーをやり始めて今東京でメインでやってますよね。大阪のオーディエンスと東京のオーディエンスの間で違いを感じたりしますか?
f:う〜ん、まあ基本的にはそんなに変わらへんと思うんやけど。まあいつも大阪ではロケッツでやってて、東京ではいつもイエローでやってて、箱のサイズだったり箱の感じでお客さんのノリとかも違ったりするんで、そういう所で来るモノは微妙に違うかな、とは思うけど。
★なるほど。
f:例えば東京やと客足が遅かったりして、割と遅くまで長く踊りたい、って言うか。大阪に比べるとゆっくり楽しんでる感じ。大阪は地元だとか知り合いが多い、っていうのもあるのか箱のサイズもお客さんと割と近いんで。結構ノリが良いと言うか。例えば客が「ギャーギャー」言ってるとかね。そういう違いはあるとは思うんやけど。
★フミヤさんはその場の雰囲気でかけるレコードが決まる、とか"かける"っていうより"かかる"っていう言葉を使ったりしてますが、大阪と東京で客の雰囲気が違ったらやっぱりセットも変わってくるんですか?
f:そうやね。カオスで自分のパーティーをやる時は連続でやるから、どうしてもものすごく違うっていうことは無いんやけど。でもまあ箱によって音の鳴りが違うから違うのは違ってくるよね。それとお客さんの感じで変わっていく、っていうのは大分あるかな。
★箱の持つ要素とその場のお客さんの要素で変えていくっていう感じですね。
f:まあそうやね。
★じゃあ例えば今日にしても今の時点で決めてるわけではないんですか?
f:まあ「あれをかけてその後にあれをかけよう」とかまではいちいち決めてへんけど、ある程度どういうことしたい、とかどんな風にやろう、とかが全然無いわけじゃないから。そういうのは漠然とはあるんやけど。例えばビートをしっかりビート主体でやるとか、もうちょっとハウスグルーヴでやるとか。そういうのはあらかじめある程度は。
★その"ある程度"っていうのはどういう感じで決めるんですか?自分の気持ちとかですか?
f:いや、自分の気持ちとかは結構どっちでもよくて。やっぱり自分が今面白いと思ってる音楽だとか、「これがテクノちゃうか」みたいなことが基本にあって、それに基づいてやってるんで。
★その「これがテクノちゃうか」っていうのは言葉に出来るとしたら何なんでしょう。
f:テクノって言うか、DJに関して言ったら・・・最近面白いな、って思ってるのは、横軸よりも縦軸で音が鳴る音楽が単純に面白いと思ってて。縦軸のバランスの方に重きを置いてやりたいと思ってるのね。やってたらどうしても横軸って出てくるから、そこに良いバランスで縦軸のバランスをはめ込んで変化を付けたい、って思うんやけど、中々レコードもそんなに無くて。そういう難しさはあるかな。カオスでは結構そういうのをやろうと思ってて。今自分が思うテクノ、っていうのはそれが結構あるかな。
★ごめんなさい、横軸っていうのはいわゆる音のジャンル的なもので縦軸っていうのは歴史的な面と考えていいんですか?
f:いや、じゃあもっと分かりやすく言うと、時間軸みたいなモノがどうしてもやってたら出てきて、そこに縦の幅、例えばその時の音の鳴りとかその瞬間のレンジやとか。そういうのを出していきたい。それが縦やったり横やったりの説明やったんやけど。
★ああ、なるほど。
f:karafutoの場合はもうちょっと横軸で、グルーヴでしっかりやりたいかな。そういうレコードで面白いのが最近は多いから、それもあるんやろうけど。karafutoはしっかり横軸でハウスグルーヴでキープしながらやりたいな、っていうのがまずあって。いろんなモノをかけたり、っていうのもパーティーによってはあるんやけど、中々最近はやってなくて。
★そうなんですね。