高木正勝

高木正勝
高木正勝
映像作家、音楽家。
自ら撮影した映像の加工やアニメーションによる映像制作と、長く親しんでいるピアノやコンピュータを使った音楽制作の両方を手掛けるアーティスト。国内外のレーベルからCD/DVDをリリースすると同時に、アートスペースでのビデオ・インスタレーションや世界各地でのライブなど、分野に限定されない多様な活動を展開している。デヴィッド・シルヴィアンのワールドツアーへの参加や、UAのミュージックビデオ制作、ダンス作品の映像/音楽を制作するなど、積極的なコラボレーションも行っている。
2006年は映像作品をまとめた書籍のリリースや、国内外での展覧会/コンサートを予定している。ロンドン、NY、ロス、東京等で開催される重要な映像のワールド・フェスの一つである「RESFEST」が選ぶ2006世界の10人のクリエーターにも選ばれるなど、ますます世界的な注目を集めている。

『AIR’S NOTE』
DefSTAR Records
(http://www.defstar.jp/)
発売中 \1,890円

『BLOOMY GIRLS』
(ART BOOK with DVD)
bluemark
(http://www.bluemark.co.jp/)
+ epiphany works
(http://www.epiphanyworks.net/)
発売中 \6,090円
映像を見終わった時に何かが解放される様な、そんな作品にしたかった
世界中から注目と羨望を集める映像作家/音楽家、高木正勝。21世紀に突入する直前に音楽×映像の融合を実践し、クラブ〜アート・シーンを騒がせた前衛ユニットSILICOMの映像担当(音楽は青木孝允)としてキャリアをスタートして以来、daisyworld
discs、W+K東京Lab./felicity、Carpark、karaoke kalkといった国内外の良質なレーベルからCD / DVDを発表、世界各地のアート・ギャラリーでのビデオ・インスタレーション、SONARや金沢21世紀美術館のオープニングを始め、さまざまなスペースでのライブ、ダンス・カンパニーの音楽
/ 映像の制作、デヴィッド・シルヴィアンのワールドツアーやスケッチ・ショウの全国ツアーへの映像での参加、UAやYUKIのPV制作などと、あらゆるフィールドで表現活動を行っている、京都在住のアーティストだ。
今回は3月に発表したミニアルバム『AIR‘S NOTE』と、5/25に発表したばかりのアートブック+DVD『BLOOMY GIRLS』のことを中心にメール・インタビューを行った。
―最新ミニアルバム「AIR’S NOTE」では、「<森と人間が生活する場所との関係性>をモチーフにこのアルバムを制作」されたということも関係し、CO2排出量計測テストが体験できるようになっています。この<CO2排出量計測テスト>や<森と人間が生活する場所との関係性>に込められた思いを詳しく教えてください。
計測テストの方は、簡単なアンケート方式のもので、質問に答えて行くと、年間どれくらいのCO2を自分が生み出しているのかが判るというものです。自分でもやってみて思ったのですが、一年間どれくらいCO2を発生しているのか判っても、実際その事が環境にどんな結果をもたらしているのか分からないし、排出量を減らすにはどうしたら良いかもと分からない。自分で調べたり、考えたりしないと駄目なんです。今回のプロジェクトを通して、色々な情報を調べてみたのですが、一番興味深かったのは「植物がどういう風に進化して来たのか、どういう風に生活しているのか」という事でした。調べれば調べる程、植物って人間みたいにエゴで出来た生き物だったんです。植物は、二酸化炭素を減らしてくれるし、人間に必要な酸素や水を供給してくれる有り難い存在なんですが、植物自身は、他の生き物を助けようとして酸素を吐き出してる訳じゃないんですね。自分達がより快適に繁栄する事だけを考えた結果が、たまたま人間にとってプラスに働いただけなんです。毎日なにを考えているかというと、自分がより成長して快適になることしか考えてないみたいなんです。
正直な所、僕自身は、環境問題に対して楽観的な方だと思います。色んな所に旅行する度に思うのですが、まだまだ色々なものの進歩が足りないだけなんだなと思ってしまうんです。より効率的にエネルギーが使える技術や化石燃料を使わない発電方法等もまだまだ多くの人が使える段階ではないし。ただ、それが経済的にも環境的にも、もっと優れたものになってきたら、みんなそっちを使いたいと思うんです。誰がどれだけ阻止しようが、多くの人がより快適で進歩した生活を送りたいと思っているし。そっちの方が自然な事だと思うんです。だから、僕自身は悲観的に色々なものを押さえ込むよりも、もっと希望を持って未来の事を考えたいんです。そして、そういう事にお金やエネルギーを使いたいし、国にも使って欲しい。
でも、こういう事を考えながらアルバムを作っていた訳ではないんです。音楽を作っている時は、あまり何も考えずに、裏山にある森に毎日出掛けては色んなものを受け取って、それを音楽で吐き出していただけなんです。アルバムに関しては、環境に対するメッセージを伝えたいとか特になくて、それよりも森を身近に感じた時に作れた曲をきちんと残したかっただけなんです。
―「AIR’S NOTE」ではヴォーカル・モノが目立ちましたが、これは意図してのことですか? 偶然の結果ですか?
実は、レコード会社からは、ヴォーカルなしの方が良い、と言われていたんです。ヴォーカルを入れる事でメッセージ性が出てしまうし、イメージが狭まるんじゃないかというのを話し合っていました。でも、僕が、製作時期に一番興味があったのは「歌もの」だったんです。だから、作り始めは2枚のアルバムを作る感じで進めていました。ヴォーカルのアルバムとインストのアルバム、それぞれ別のプロジェクトとして。ただ、アルバムの締め切りが迫って来た時に曲を並べてみると、全体としては、ヴォーカルとインストを混ぜた方がより自然な形に聞こえたんです。それで2枚のアルバムから7曲だけを選んだんです。結局、40曲近い曲をこの時期に作りました。
―ヴィジュアルブック「BLOOMY GIRLS」についてですが、今作は、高木さんのこれまでの念願でもあった「書籍」という形態となります。この「書籍」というメディアに取り組みたかった理由を教えてくれますか?
本は昔から作りたかったんです。DVDよりも本で発表したかったくらいで。というのも、映像を作るといっても、音楽の様に楽器を演奏して作るというより、一枚一枚動かない絵を描く感じで作っているんです。だから、静止画の方が、僕が映像を作っている時の感情や感覚をより表していると思っています。
本当の所、僕は映像よりも絵を描きたかった。ずっと絵画に対して憧れている部分があります。それでキャンバスに絵の具で描いてみた事もありますが、上手く行かなかった。映像の方が適切に表現出来るんです。1枚の絵画でやりたかった事を5分の映像でやっている感じです。そういう部分も書籍から感じ取ってもらえるんじゃないかなと思っています。今回はDVDも付いていて、本には映像から抜粋した静止画が収録されていますが、どちらも違った感じで見てもらえたら嬉しいです。
―「BLOOMY GIRLS」を制作する上で、テーマやコンセプトを設けていたのであれば、教えてください。
特にテーマはないんですが、技術面では、ずっと昔からやりたかった「動く絵画」というのを実現出来たと思っています。映像を作り始めて5年くらい経ちますが、この映像は一つの到達点になった気がします。この映像も前から順番に作っていて、最初は単純に絵の具の質感が動くだけで楽しかったのですが、だんだん何故動かしたいのか、何を表現したいのかに感覚が変わっていきました。
言葉で説明するのは難しいですが、表現として試したかった事を敢えてあげると、「成長」「官能」「風」。色々ありますが、一言で言うと「解放」という言葉になると思います。映像を見終わった時に何かが解放される様な、そんな作品にしたかった。
―映像にしろ、音楽にしろ、高木さんの作り出すものには、「人や社会の暗部を内包した美しさ」や「暗闇が放つ美しさ」を感じることが出来ます。それゆえに息を飲んでしまう心地がします。「暗闇」「美しさ」という部分には意識的ですか?
そういう部分は、後から自分で見た時にも感じますが、作っている最中はあまり何も考えていないものなんです。手を動かしたり、形や色、動きに集中して作っているので、あまり何も考えていない。ただ、「美しさ」というのは、いつも求めている事です。自分にとって「美しい」とは何か? 制作していて気づいた事は、美しいものを作ろうとする時、綺麗なものや気に入っているものだけを集めても、ちっとも美しくならないんです。リアルに感じない、というか。
よく使う表現なんですが、山って遠くから見た時と近づいて見た時の印象って全然違いますよね? 遠くからだと整っていて清楚な感じに見えるものが、近づけば近づくほどグロテスクな世界に変わって行く。どっちも普通にそこにある状態が自然で美しいと思うんです。無理矢理置いてもいけないし、勝手に置いてもいけない。美しいものを作ろうとする時ってそういう感じでしか上手くいかないんです。それには、無我になるしかなくて。ものを作るって「自己表現」とか思われている節があるのですが、僕にとって、ものを作るというのは「どれだけ自分から離れられるか」の方が近いんです。そうして出来た作品の方が、人と繋がれる可能性を持っていると思います。
―「映像」と「音楽」、一見すると表現手段の異なるものを創造/制作されていますが、そこに共通する“思い”や“スタンス”を教えてください。逆に、共通しないものも教えてください。
どちらも5分以内くらいの短い作品を作る事が殆どですが、その短い時間でも他の分野に出来ない感動を生み出せる可能性があると思っています。どちらも時間を扱う分野なので、出来るだけ始まりから終わりに向かって作る様にしています。それは、出来るだけ「初期衝動」や「製作の本質」を残したいから。これは、作れば作る程、感じる事なのですが、綺麗な画面や音を沢山集めても「作品」には仕上がってくれないんです。良いメロディーを作ったからといって「良い曲」になる訳ではない。
作品を通して伝えたいのは、メッセージやコンセプトとかではなくて、映像や音楽と自分が一体になった瞬間を人に伝えたいんです。本当に集中した時に自分にとって「良い作品」がぽろっと生まれる。いくら訓練しても、中々そういう瞬間は味わえない。そして「良い作品」には、そういう瞬間のエネルギーが強烈に宿っている。だから、人は人が作ったものに感動したりすると思っています。「映像」と「音楽」、表現手段が違う様に見えますが、そういう意味ではやりたい事は一緒なんです。ただただ、その瞬間を捕らえて人に伝えられる形にしたい。色々試した結果、その2つが自分にとってやりやすかっただけなんです。
―映像、音楽、写真、書籍、これ以外にもご自身で取り組んでみたい/興味のある表現方法/メディアがあれば教えてください。
今は、静止しているものを作ってみたいです。写真でも絵画でもいいのですが、なにか動いていないものを作りたいです。
―創作する上のインスピレーションは、どういった場所/もの/とき、から受けますか?
ごく平凡です。天気が良かったり、体調が良かったり、良い音楽を聴いたり映画を見て何かに感動したり、そういう時に作りたくなります。
―今後の活動予定を教えてください。
秋にメキシコ、パリでライブを予定しているのと、東京でもライブコンサートを予定しています。今年は、そのライブに向けて準備していくのに時間を掛けようかと思っています。