rei harakami

rei harakami
広島生まれ、京都在住。 96年、Sublime RecordsよりFlare(KEN ISHIIの変名プロジェクト)のリミックスア ルバム「Re-Grip」での1曲でデビュー。
98年に1stアルバム「unrest」リリース。テクノ、ジャズ、フュージョン、AORなどが 複雑に融合したかのような、クラブミュージックという表現ではくくれないサウンドが評判となる。
その後、99年「opa*q」、01年「red curb」をリリース。
これらの作品がきっかけで新たな電子音楽の担い手として多くのアーティストから賞賛され、矢野顕子、UA、Great3、ショコラ、ASA-CHANG&巡礼などの楽曲プロデュース &アレンジや、くるり、Number Girl、竹村延和、コールドカット(UK)など多数の アーティストの楽曲をリミックス…など、いわゆるジャンルを越えた活動を実現させ ている。
2005年5月には実に4年ぶりとなるアルバム「lust」をリリース。独自の清廉さと繊細さが織り成す、例えると水彩画のようなタッチの音楽が早くも絶賛されている。またその独特のライブが評判を呼び、今までに「Fuji Rock Festival」「RISING SUN ROCK FESTIVAL」「sonarsound tokyo」「くるりpresents百鬼夜行」「ROVO presents MAN DRIVE TRANCE」など国内大型イベントをはじめ、フランス、ドイツなどのフェス ティバルにも参加している。
今年6月にはスペイン・バルセロナで行われる音楽とアートの祭典「Sonar2005」に出 演。また夏には北海道最大のロックフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に出演も決 定し、全国各地でのツアーを展開している。
http://blog.excite.co.jp/reihrkm

rei harakami
『lust』
発売中

rei harakami
『opa*q』
発売中

rei harakami
『unrest』
発売中
大風呂敷広げて「どんなもんだ!!」みたいな音をやりたいわけではないんで。
日本が世界に誇れるものは何があるだろうか。トヨタ?イチロー?ジャパニメーション?答えは数多く有れど、日本に住むミュージックラバーが胸を張って言えるのが"rei harakami"の名前であろう。
希代の名盤『red curb』から丸4年。エレクトロサウンド界の時代の窮児としてその名を馳せ、無数のリミックスワークを経て、あの電子音の洪水と繊細なリズムトラックが帰ってきた。その名も『lust』。もう耳にしただろうか。
僕の役割はこのアルバム、そしてrei harakamiというアーティストを今ここで言葉で説明することだ。しかし今回はその役割をあっさりと破棄させて頂こう。何故か。それは『lust』に収められた音が言葉との距離を雄弁に物語っているからだ。その距離を肌に感じ、それでも僕の役割を遂行するのであればこんな感じだろうか。
rei harakamiの最新作、『lust』。それは"いつものあの感じ"と"見事に裏切られた感"が矛盾することなく同居した会心作である。
究極のオリジネーターであり、それでいて究極のノスタルジアを提供し続けるrei harakamiにアップルストア心斎橋店に行われたインストアライブの直後に話を聞いた。
★基本的に最新作『lust』に関して聞いていこうと思うんですが、その前に今日のアップルストアでのライブのことを少し聞いていきたいと思います。
rei harakami(以下rh):はい。
★アップルストアでのライブって聞いてたんでマックを使うと思ったらそうじゃなかったんですね。
rh:僕は最初からそれは出来ません、って言ってるので。それをやっちゃうとバカみたいに機材が多くなっちゃうから。
★なるほど。
rh:ライブに関してはあのセットでしかやってないんで、すいませんけど、っていう。
★じゃあライブをやる時は常にあのセットなんですね。
rh:基本的にはね。あのハードディスクレコーダーと呼ばれるものなんだけど。結局あれが一番安定してて熱にも強い。
★そうなんですね。しかもマックもOS9しか使ってらっしゃらない、って聞いたんですが。
rh:いやいや、OS9しかっていうのは音楽に関してですよ。ソフトが99年で開発がストップしたままなんで。無くなった訳ではないんですけどね。
★ではライブの時はあんな感じなんですね。あれ1台であれだけ多彩なことが出来るんですね。
rh:まあもちろん出来ないこともたくさんあるんですけどね。まあそれでいいかな、って。まあ自分だけしか出来ないから、逆にそういう所で楽しんでる所もあるんだけどね。
★ああいうクラブでもライブハウスでもない所でやることはよくあるんですか?
rh:ああいうのはほとんどないですけどね。まあでもあれくらいキャパって言うかああいう感じの所でやるのであれば、今日みたいなノリで。本当は座ってやろうと思ってたんですけどね。良い感じの椅子がなくて(笑)。あと座ると冷たい椅子だったんで腰によくないかな、と。
★やっぱり今ハラカミさんがライブをやると少なくても200〜300人くらいのお客さんが来ますよね。そんな中で今日は100人程度だったと思います。違いみたいなのはありますか?
rh:ん〜、でもちなみにね、大阪とか京都とかは僕が考えてる以上に大人しいのか冷たいのか(笑)。実際はどうなのか分からないけど。広い所にお客さんがバーっている方がやりやすいと思うようになってきました。
★あ、広くてお客さんが多いほうがやりやすいんですね。
rh:うん。小さい所はいろんな人のいろんな音が聞こえちゃうんで。それはどうなんやろうな、って思うことがよくあります。まあでもクラブじゃない所なら結構ダラダラ出来るような音でやりたいな、っていうのはあります。そうじゃない曲をやる時もあるけど、あんまりリズムを前面に出すような曲はやらないようにしよう、とは考えてますけど。
★ゆっくり聞いてください、っていう感じですね。
rh:うん。人がぎゅうぎゅうな場所でもないだろうし、って思ってましたし。
★分かりました。ではアルバム『lust』についての質問にいきたいですが
rh:久しぶりです(笑)
★あ、そうですよね。リリースの頃は結構インタビューもありましたよね。
rh:ええ、結構やりました。
★まず『lust』を聴いて感じたのはすごく"自然体"ということだったんですね。"シンプル"っていうともしかしたら悪い意味に聞こえるかも知れませんが。
rh:いえいえ、全然。
★例えば『red curb』っていうアルバムはハラカミさんの"レイハラカミ節"とも言えるモノが前面に押し出されたアルバムだったと思うんです。独特の電子音だったり、変わらないモノもあるんですけど、やっぱり『red curb』は灰汁が強いって言うか。それに比べて『lust』はすんなり聴けて、どんな感情の時にでも聴けるな、って。そういう意味で自然体な作品なのかな、って。
rh:それは実際そうですね。『red curb』の時にもっとやろうとしてたことがあって、それはもっと展開として例えば「人を欺いてやろう」とかあったんだけど、今回は無い。
★なるほど。例えば2曲目の『joy』をiTunesに入れると聴く前にその曲は10分あることが分かりますよね。それを聴いてると「あれ、この曲はこのまま10分いっちゃうんや」っていう驚きとも言っていいような感想を持つんですよね。これまでならリズムパターンがいきなり変わったり、っていうのがあったと思うんですが。
rh:見事に無い。もういろんな人の曲をやって、嫌でも「32小節目には変えなあかん」みたいな仕事をやってたんで。歌ものとか。
★もういいかな、と。
rh:いや、言うなれば「今はいいかな」っていう感じ。ただ展開してないわけではない。そこが微妙なところなんだけど。いわゆる普通のミニマルミュージックと言われてる所とはちょっと違うと思う。確かに表面上はずっと一緒だけど、確実に3分後と5分後と7分後とが違う、っていう感覚の作り方はしてる。それこそ大風呂敷広げて「どんなもんだ!!」みたいな音をやりたいわけではないんで。
★前回まで「欺いてやれ」っていう思いがあって、今回はそれはない、っていうことは今回は対象となるモノがなかった、ということですか?
rh:う〜ん、『red curb』では聞き手に対してある種アグレッシブな何かを求めてたりするのかもしれないんですね。「もっと来いよ!!」みたいな(笑)。まあそういうのは今回は無いね。何で無いんだろう、って僕もちょっと考えるんですけど。まあ・・・別に・・・いいか、って(笑)
★(笑)じゃあ主となる音楽を作るモチベーションっていうのはもし言葉に出来るのであれば何なんでしょう。
rh:それは今回だけじゃなくて、根底にあるのは「気持ちの良い時間の展開」っていうだけなんです。例えば同じ10分でも違うアーティストの俺の作る10分は明らかに違うわけじゃん?そこでいいじゃん、って思いながら作ってる所はある。人によっては「自信がついたんですか」ってとられることもあるけど。だから『joy』に関しては本当に作りながら自分で「まだいけるな」っていう作り方してた。
★まだ気持ちいいな、まだ気持ちいいな、って。
rh:そう。そうやってると10分になっちゃった。
★なるほど。まあそういう意味で自然体というか、直接的に訴えかける要素が減ったのかな、と思ってると、これは誰もがびっくりしたと思うんですけど・・・
rh:歌でしょ?
★そうなんです。歌ものがあって。これはどういうことなんだろう、って。
rh:アハハハ。別に謎かけしてるわけじゃないんだけどね。
★(笑)やっぱり言葉って意味を限定するし、直接的じゃないですか。そういうのが細野さんのカバーで入ってきた。あの曲は位置づけとしてはどう考えたらいいでしょうか。
rh:まあまあ、あれは自分でアルバムを作るっていうこととは、まったく別件でやってたことなんで。そもそも矢野さんがやりたいって言ってて、それの仮歌で僕が「テロテロ〜」って歌ってたやつだったんで。でも適当にやったわりにはよく出来てるな、って思えて。でもこれはあれですよ。自分が作った歌詞で自分が作ったメロディーだったらここまで出来てないんですよね。細野さんのあの曲だったからああいうクオリティーのものが出来たと思ってるんで。今後とも歌ものを、っていう話ではないんですよ。
★じゃあ元々歌ものをしたいな、って思ってた訳でもなく。
rh:まあやるんだったらどういうやり方がいいだろうな、っていうのは思ってたんだけど。僕ら界隈でよくあるやり方だったら、女性ボーカルを立てて、っていうのがありがちじゃないですか。でもありがちなのはな〜、って思うんで。そもそも『lust』っていうアルバムを作る状況の中でもいろんな人とやってるから。いろんな人を介在させた、例えばこの曲はくるりの岸田君と、この曲は矢野さんと、って言う風にやろうと思えば出来るんだろうな、とは思ってたけど。やっぱり単純に僕が第三者になったとして次のレイハラカミのアルバムが出たとして、そういういろんなアーティストがゲスト参加したアルバムを聴きたいか、って言うと、それは別にいいだろう。それはいつでも聴けるじゃん、って思って。だったら一人で作ろう、と思って作りました。もちろんそっちの方がしんどかったですけど(笑)
★あ、そうなんですね。
rh:しんどいですよ。ずっと一人でやるわけだから。
★そうですか。そもそもハラカミさんの曲って「フフーン、フーン」って鼻歌とかで歌いにくいですよね。
rh:それは何故か、って言うと明らかにメロディー的なモノが無いから。メロディーをメロディーとして配置してないんです。
★そうですよね。インストバンドでも口ずさめるモノもあるじゃないですか。主旋律的なモノをあえて消してるんだろう、と思ってたんですけど。
rh:無いんですよ、元々。そういうメロディー的なかけらは多々配置はしてるんだけど、基本的には無いんですよ。
★それは入れたくないからですか?
rh:いや、無くていい。無くていい状態でやってる。だから人によっては覚えにくい、って言うんだけど、あるタイプの人からすれば逆に歌心をそそられるわけですよ。主旋律が入ってないことによってね。昔よく聴いてたのが、イージーリスニングでも何でもそうなんだけど、主旋律がどうでもよくなるような音楽が好きで、アンサンブルを聴いてるのが元々好きな方なんです。主メロが無くなったら突然その曲の魅力が無くなるような曲がカラオケとかでもよくあるじゃないですか。それはそれで大事なんだけど、主メロが無くても成立してるようなタイプの音楽とかよく聴いてて、逆に有りだな、って。
★なるほど。とりたててそこに目的があるとか、意味があるわけでは無いんですか?
rh:そうすることの?
★はい。と言うのも、例えば嬉しいメロディーだったら嬉しくなるとか、悲しいメロディーなら悲しい時に聴いてほしいとかよくあるじゃないですか。そういう曲のイメージを限定させたくないのかな、っていう。
rh:それはそうですよね。メロディーってやっぱり"意味"になっちゃうので。そこに言葉を乗せなくても意味になっちゃうから。でもまあ大きな歴史で言うと、音楽っていうのはいわゆる昔からあるクラシック音楽とかは置いといて、口伝えの民謡とかって、"口伝え"っていう時点でやっぱりメロディーしか世の中には伝わって来ないのかな、って思うし。だけど、その口伝えだけで来てる感じとかは、あえてそこまでしなくてもいいじゃん、って僕は思うんです。今はね。
★なるほど。
rh:でも結局みんなメロディーになっちゃうんだよね(笑)。
★でも主旋律みたいなものが無かったら作りにくかったりしないんですか?
rh:それはどこから作りたいと思うか、じゃないですか。取っ掛かりとしてどこから作るか、っていうのは人それぞれだろうし。どんな物語でも、この登場人物に最後にこういう一言を言わせたいからこういう物語を作る、っていう人もいれば、最初にストーリーをたてたから、最終的にこうなっちゃった、っていう人もいるだろうし。それは人それぞれだと思うんです。僕もよく人に「コードから作るんですか?リズムから作るんですか?」とか聞かれるんだけど、「曲によって違います」って言うしかないんですよ。なので作ってる途中ではなるべく言語化しないようにしてるんです。今はインタビューなので言語化しないと成立しないので言語化しますけど。
★その中でも例えばアルバム名とか曲名もあるし、そこがちょっと不思議な付け方をなさってますよね。
rh:不思議かな(笑)。でも他の人も不思議じゃないですか。それと一緒なんですけどね。そんなに対して意味があるようで無いようで、っていう話なんです。
★でも今回の『lust』っていうのはこれまでのタイトルと比べると、例えば『opa*q』と比べたら直接的に意味がありますよね。
rh:『opa*q』は意味は無いですね。
★しかも強い意味の言葉ですよね。
rh:強い意味だね。「強い意味にしたかった」っていうのはあるんです。久しぶりだし。まあ昔から気になってた言葉だった。7つの大罪の一つだとか。それも分かってたし。なんだか"どぎつい"言葉だな、って。でも結局ここで言ってるのは、「祈ってたり願ってたりしててもどうにもならない感じが世の中には結構あって」、っていうところですかね。
★それは今の世の中の状況ですか?
rh:それも含めて、それと僕のプライベートのことも含めて。でかい所から言えば「戦争なんて無くなればいいのに、人が殺されなくなればいいのに」ってほとんどの人は思ってるだろうけど、思ってても戦争は起こるでしょ?そんな感じですかね。
レイハラカミインタビュー後編へ続く。