LIKKLE MAI

LIKKLE MAI
'94年よりDREAMLETSなどのヴォーカリストとして本格的な音楽活動を開始。翌年DRY&HEAVYに加入、4枚のオリジナルアルバムをリリース。セカンドアルバム以降、海外でも高い評価を得て多数のフェスティバルに出演。国内外での精力的な活動の側ら、LITTLE TEMPOなどの作品への客演、DJとしても活躍。'05年DRY&HEAVYから更なる一歩を踏み出し、ソロ・アーティストとして始動。現在1stソロアルバムが完成。
<主な参加作品/出演イヴェント>
* エイドリアン・シャーウッドのショウでゲスト出演 ( '00年)
* リトルテンポ
『Kedako Sounds』('01年)にゲストヴォーカルとして参加
* ショートムービー
『Frog River』('01年)
のテーマソング『Rock'n'roll Radio』にヴォーカルで参加
* マッド・プロフェッサーのショウでDJ出演('03、'05年)
* ディサイプルズのショウでフィーチャリング・ヴォーカルとして出演('04年)
* ピート・ホールズワースのDJイヴェントにDJ出演('04年)
* 05年公開の木村カエラ主演映画『CustomMade 10.30』へ挿入歌を提供('05年)
* その他remix誌、FUDGE誌での執筆・連載も行う。
* blog
http://likklemai.jugem.jp/

LIKKLE MAI
『ROOTS CANDY』
BEAT (http://www.beatink.com/)発売中 2,800円
INFORMATION
[ ROOTS CANDY TOUR ]
3/16木 @ 代官山UNIT
3/17金 @ 名古屋CLUB UPSET
3/19日 @ 大阪club vijon
3/20月 @ 広島4.14
3/21祝 @ 福岡CROSSING HALL
MORE INFORMATION
http://www.beatink.com/events/
rootscandy/index.html
DJ出演
3/18土 ZETTAI-MU @ 大阪NOON
“手段”に囚われ過ぎないで、自由にやった自信はあるね。
世界が羨望する最強のライブ・ダブ・バンド、ドライ&ヘビーのメンバーとして、
リー・ペリーやホレス・アンディ、エイドリアン・シャーウッド、マッド・プロフェッサー、エイジアン・ダブ・ファウンデーション、プライマス・スクリーム、ブジュ・バントンなど世界一流の音楽家と共演し、ワールドワイドな活躍をしてきた紅一点ヴォーカル、リクルマイが昨年ソロとして再出発した。
ここ極東の島国で、こだま和文やオーディオ・アクティブ、ドライ&ヘビー、
リトル・テンポらが己の身を切り詰める覚悟で吸収し、進化させたダブ/レゲエという音楽は、一方で、その表面のフォーマットだけがすくい取られ知った顔でポップ化されもしている。が、そんな状況を横目に、彼女の眼差しは本質を見据えているのは、だからこそオリジナル、それこそがダブ、ということだ。
この2月には早速ファースト・ソロ・アルバム『Roots Candy』をリリース、最前線をひた走りながらも”これまで”と”これから”をしっかり見据えている彼女の視線のその先を、聞いてきた。
※このインタビューと繋がる形で、日本ダブ・シーンに欠かすことの出来ないダブ・エンジニア、内田直之にも「ダブとは?」というお題でインタビューしたので、そちらもお見逃しなく!
(リクルマイのインタビュー後編の際に同時掲載します)
―まず、最初に気になるところなのですが、ドライ&ヘビーは現在、どのような状態ですか?
LIKKLE MAI(以下M) アタシはドラヘビを脱退というか旅立って、ソロという形で独立しました。もちろんドラヘビは解散したわけではありません。みんなそれぞれ忙しいから。見ようによっちゃ休止しているように見えるかもしれないけど、またいずれホットな話題がやってくると思うよ。私が言ってるのも変な話だけど(笑)。
―ドリームレッツ、ドライ&ヘビーとバンドとして活動してきて、この度ソロに。ソロになることでの心境の変化はありましたか?
M 最初、ドリームレッツはロック・ステディのカバー・バンドだったのね。その頃は、自分がレコードで聴いてる音楽を実際に歌えるっていうのだけで楽しかった。初期衝動というか。アタシは岩手出身で、ド田舎で、ライブハウスもないようなところで、音楽聴くくらいしか楽しみがなくて。その頃から70年代の音楽がとりわけ大好きで、ロックもソウルもファンクも。なにしろ田舎だからボブ・マーリーもロックのコーナーにあって。それでなぜかこの音楽だけは異質だなと思って、そこからレゲエに入った。それ以来もうずっと、音楽の聴いてきた一番の芯はルーツ・レゲエ。
―70年代の音楽が好きになったきっかけの一枚ってありますか?
M ドアーズがすごい好きで。ジェームス・ブラウンも。あの時代の雰囲気とかパワーってすごいじゃん? あの頃ってテクノロジー的にはどんどん成長していってるけど、人間の野性味も失ってない、いいバランスの時代だったなって。それで東京に出てきて、今まで田舎にはなかった(笑)、クラブというものにハマって。そのなかでも一番おもしろかったのは、スカ・フレイムスの長井さんが“マイティ・マサ”としてサウンド・システムを始める前にDJとしても活躍してて、その長井さんのイベントがまさにストライク・ゾーンで。スカ、ロック・ステディ、ルーツ・レゲエ、ニュー・ルーツといった感じで、ジャマイカの、まあニュー・ルーツはUKだけど、いろんな時代をそのまま一夜に凝縮したって感じのイベントを下北沢ZOOでやってて。ホント毎週入り浸ってましたね。そこにドリームレッツのメンバーとかドラヘビのアキモッチャンとかアオちゃんとかが集まってて。10年以上前の話だけど。
で、ドリームレッツの翌年にドラヘビに入って。メンバーはみんなレゲエという音楽を常日頃から追求している連中なので、いろんな意味で切磋琢磨できて。そうやって刺激を受けつつも自分なりのレゲエ観も出せる、貴重なバンドだった。ライブをやる前の一年間は地力をつけるために、吉祥寺のボロいスタジオで練習ばっかしてて。で、練習やったあとは必ずみんなで飲んで(笑)。練習は3時間くらいでその3倍の時間飲んで、レゲエ談義。店が閉店したらメンバーん家に行ってまた昼くらいまで飲んでっていう(笑)。これがあったせいで一気に酒が強くなったね(笑)。ドラヘビでは海外ツアーやったり、国内でもフジロックや大きなフェスティバルに出させてもらって、その財産は貴重なものとなっているし、感謝してる。
―じゃあソロになるにあたって、やはり心機一転な気分ですか?
M ところがそうでもなくて、5、6年前にも一回「マイちゃんソロやってみないか」っていう話もあったのね。でもその頃はちょうどアキモッチャンが脱退する時期だったり、ちょっとタイミングが悪くて自分でも躊躇しちゃって。だけどその頃作った曲は今回も入ってるし、ドラヘビやってるときから「ソロやるんだったらこんな曲だな」っていうヴィジョンはあったので、それを形にしたというか。
もうちょっと早いタイミングで出しても良かったんだけど、全部納得いくまで突き詰めてやったんで。今回はアタシと共同プロデューサーのTHE
K君と二人で土台を作って、ゲスト・ミュージシャンも全員自宅に来て弾いてもらったり吹いてもらったりしたから、宅録の感じのあったかみも出てると思うし。バンドの良さって例えば「おっギターがこうきたか」ってそれぞれの関係性のなかで無限大に可能性が広がっていく楽しみがあって、でも今度は逆に“個”を最大限生かせるようなものにしたかったの。だから今回はアタシと共同プロデューサーのTHE
K君と二人で、自分でやれることは全部やりつつ、それこそキーボードも弾いたし、小編成で最大限の効果を生み出そうとした。

―このアルバムに内田直之さんがダブ・エンジニアとして参加していないのが意外でした。勝手な先入観なのですが。
M 内田君は売れっ子すぎるから(笑)。今回やれることは全部自分らでやりたいっていうのがあって。THE K君もレゲエ・ディスコ・ロッカーズやV.I.Pバンドとかでエンジニア経験もあるしね。自分たちでやれることは全部やるっていうのがルールで作り上げていったんで。もちろん、いろんな錚々たるメンツを駆使してっていうアルバムも考えることはできたんだけど、最初から贅沢はしたくなかった。いくらドラヘビっていう歴史がありつつも、ソロでやっていくには新人だから、最初からいいスタジオとか豪華なメンツが売りのアルバムにはしたくなかった。
―『Roots Candy』とはどういった意味ですか?
M すごい70年代の音楽が好きって言ったじゃないですか。とりわけホレス・アンディとかジョニー・クラークみたいな、彼らのことを“カリビアン・ヴォイス”って呼んでるんだけど、ジャマイカ特有のハイトーンヴォイス、あの声質に、地を這うベースが絡むからすんごいクールなんだなっていうのが自分のなかではあって。ジョニー・クラークって、“シュガー・コーティッド・ヴォイス”って「砂糖をまぶしたような声」って言われてるし、ホレス・アンディは、「COOL AS A CHANDY.HE IS ROOTS CANDY」って表現されてて。甘いんだけどカッコいい、みたいな、そういう表現を「あっ、アタシこれだな」って。自分の声にも、そういう自負があるから、これイタダキ! って思って。で、最近新たに、ジャケットを名古屋のIMAGINARY FLOWERがデザインしてくれてるんだけど、シングルの裏ジャケがね、アタシが木の根っこの上に座ってて、この根っこに飴ッコみたいのが絡み付いてるのね。この絵を見たときにさ、新たなルーツ・キャンディのイメージが沸いてきて、人間ってさ、自分が小っちゃい、宇宙の星屑、みたいに小さい存在だなって謙虚に構えたときに、初めて地に根を這った人間になれるって。逆に「オレのルーツは…」みたいになった途端に、飴ッコくらいの小っぽけな存在に成り下がってしまう、みたいなメッセージが浮かんできて。ちょっとルーツマンな、ラスタマンな戒めに近い意味もあるなって思って。増々ルーツ・キャンディってタイトルが気に入っちゃった。
―いわゆる“レゲエ・マナー”を外れている楽曲もあったのが意外ながらも新鮮でした。
M そうだね。でもね、今のレゲエ・ミュージックってコンセプチュアルすぎると思うのね。今ってカッティング・ギターがあればレゲエ、とか、もうそれはアタシにとってはカッコいいことでもないし、レゲエでもないなっていう。アタシがレゲエに衝撃を受けたのは、当時それが斬新だったからよ。今までになかった方法論だったからグサッと胸に突き刺さったの。だからこれはアタシにとってはレゲエ・アルバムなんだよ。すごいチャレンジ的な作品だし、新しいと思ってる。あんまりさ、そういう“手段”に囚われ過ぎないで、自由にやったっていう自信はあるね。
―日本語歌詞にも挑戦されていますが、難しかった点はありますか?
M それはなかった。でも日本語をレゲエのフォーマットに乗せると、結構字余りか字足らずになっちゃうっていうのがあって。ダンスホールでもあることだけど、すっごい言葉が早くて何言ってるのかわからなくなっちゃう、みたいな。日本語でするならそういうふうにはしたくないなっていうのは思ってたから、日本語に合うフォーマットを選択した。それもアタシのルーツだなって思ったから。いつか日本語で曲は書きたいっていうのはあったし、より日本語の伝わるフォーマットを選んだ。ルーツ・レゲエだったらに英語のほうが乗っかりがいいと思うのよ。
―言葉とリズムによって乗っかりやすさとか、違うものなんですね。
M そうそう。アタシがルーツ・レゲエに惹かれたのも、重〜いベースラインに乗っかる呪術的な節回し、みたいな部分だったりして。それは英語でやったほうがいい。で、日本語はアタシの一番伝わると思う選択肢だから。
例えば「朽ち果てぬ光」は、昔からメロだけはあって、最初はもっとやさぐれた歌詞だったの。「楽しいことばかりでは〜」って始まりなんだけど、そういう「楽しいことばっかじゃないんだよ、世の中!」みたいな屈折した歌詞だったのね。だけど、なんかこれじゃあなっていう部分があって。そういうときにアタシの大好きなサッカ−選手、アルゼンチンのアイマールなんだけど、その彼がTVで、子供達に向かって「練習は苦しくても、失敗したりしても、太陽の光は誰にでも降り注ぐんだから、サッカーを楽しんで」って言ってて。確かに人種も世代も性別も超えてお日様って降り注いでくれる。それを考えたときに詩がぶあーっと思い浮かんで。その気持ちでみんなをあっためられるんじゃないかなって。
―歌の、その奥に潜む、「実はこういうことを伝えたいんだよ」というのを感じたのですが、それってどういうメッセージですか?
M 感じる?(笑)。でもね、アタシはその答えを限定するのはよくないと思う。答えは一個じゃなくていいし、それが音楽の楽しさだから。むしろこのアルバムが賛否両論になればいいくらい。同じ一個の曲に対して、いろんな意見が出てくるのがいい音楽なんじゃないかなって。一個の答えばっかりを押しつけてくる音楽だったら、アタシはちょっと引いちゃうんだよね。いろんな解釈ができるからおもしろい。そういう意味ではこのアルバムはバラエティに富んでるから。だから「限定しない」っていうことが答えかな。
―リズムとメロディの関係性が豊かだな、と感じました。前半では特にメロディの部分が前面に、後半に進むにつれリズムの要素が色濃くなってくる。広い間口からどんどんと濃い、深いところに連れていこうとしているな、と。
M 「My Old Flame」みたいなさ、アーシーで呪術的でドープな曲があったりもするけど、「朽ち果てぬ光」とか「Why Are You
In A Hurry?」みたいなポップな曲もあって、スパニッシュ・ギターとかジプシ−的な音楽を反映させた「Gypsy Woman」もある。「Your
Love」なんかはタイトなベースとチャカポコなリズム・ボックスで、70年代初期のレゲエ・サウンドになってる。それだけが一個のアルバムに共存してるっていうのがまず面白いと思うんだよね。しかも一個一個は全然違う曲調なんだけど、通して聴いてみると流れて聴けるし、ミュージシャン仲間からも乗り物に乗って聴いてると、景色と一緒にサウンドスケープできるのが楽しいって言ってくれたりして。
アタシはどんな方向にも種まきをしたいのね、このアルバムで。だからどの曲が突破口になってもいいし、新たな間口を広げる作業をするっていうのがソロの仕事だと思ってるから。
―特にリズム・セクションの音の質感がキング・タビーを思い起こさせました。具体的にこういう音色を目指した、というのはありましたか?
M ドラムは、もうまさにタビーのアグロヴェーターズの曲とかスラロビとかウェイラーズとかのいいドラムの音色を使ったね。やっぱりね、レゲエってさ、基本的に爆音で聴くからドラムの音色とか意外にしょぼかったりするんだよね。一個一個を素材として聴くとね。全体像として聴くとすごいキラーなんだけど。だからレコードのシングルをダーって聴いて、いい音色のやつだけ切り取って、みたいな。サンプル作業はドラムだけ。あとは全部手でやったから。そういう意味ではバレット兄弟と共演できたのはいいことだなって(笑)。タビーは一番好き。一番ノセられる。ボブ・マーリーは歳とっても付き合える音楽だけど、衝撃度からいったらアタシはホレス・アンディとかジョニー・クラーク、アグロヴェーターズあたりで。あのベースに踊らされちゃう。
これまでの歩みとアルバムの話題が中心だった前半に続き、後半ではレゲエ/ダブの魅力や日本、関西への思い入れ、脱線ネタとして格闘技トークまで(笑)飛び出しています。
最初にアナウンスした内田直之のショート・インタビューもありますよ。