JUZU a.k.a MOOCHY

14才の時ギターとターンテーブルを手に入れ、グラインドコアのバンドとDJ両方の音楽活動を並行して始める。DJとしては90年代初頭、今や伝説化したパーティRHYTHM FREAKSのオーガナイズ及びレジデントDJとして一世を風靡。 90年代の終わりから打ち込みでのトラック・メイキングを開始。その一方で楽器演奏をメインとしたバンドNXSのリーダーとしても活動を展開。DJ、楽器演奏、プログラミング、エンジニアリング、バンド活動、パーティーオーガナイズまでをもこなす、音楽に対し貪欲で雑多、雑食な姿勢を持ち続ける希なアーティスト。

『MOMENTOS』
KOKO-0002 / オーバーヒート
\2.520-(税込み)
僕は子守歌と宗教儀式の音楽が究極の音楽だと感じるんです。つまり対象が有形と無形っていう意味で。
何を隠そう生粋の捻くれっ子である筆者は、例えば「音楽にジャンルなんて関係無い」というテーゼが完全に一般化する昨今、逆に「そうは言えどもやっぱりジャンルだろう」なんて思ったりもする。いや、確かに音楽をジャンルでカテゴライズすることはもはや不毛の極地であり、それには何ら異論は持たない。しかし誰もが疑いもなくそのパッケージ化された言葉を使うのを聞くと、やはり少し違和感を覚えるのだ。それは本能的とも言えるあまのじゃく精神で、こればっかりは仕方がない。しかしだ。そんな筆者でさえ、やはりジャンルという概念を自分の持つ全てのポケットから一つ残らず捨てざるを得ない音と出会うこともある。それがjuzu a.k.a moochyの放つニューアルバム『MOMENTOS』である。
『MOMENTOS』に流れるどこか懐かしく、開放的で、しかしどこか不穏で切ない空気。それは一つのストーリーを紡ぎ出すような、一つの命が生まれ、そして死んでいくのを見届けるような、遙かなる大地の下で人間の儚さを感じるような、その場にしゃがみこみ小さな石のかけらを手で掴むような、神という漠然とした存在を感じるような、言葉では言い表すことが不可能な“矛盾”が一定のグルーヴの中に住み込んでいる。
そう、矛盾。まるで革命へと続く機運のような勇猛さと、いつか母の胸の中で聴いた暖かさが同居する『MOMENTOS』。ジャンルを完全に通り越して我々にその先に感じさせる“何か”。それは一体何なのか。juzu a.k.a moochyは、どこで、何を感じ、後に名盤と称されるであろう『MOMENTOS』完成に辿り着いたのか。 大阪のクラブヘッヅ達の度肝を抜いたUNITED UNDERGRAND 鶴の間presents GW 7days 8hoursのトリを飾ったjuzu a.k.a moochyに、その翌日話を聞いた。
★アルバム『MOMENTOS』に関することを中心に聞いていこうと思いますが、その前に昨日の感想から聞きたいと思います。昨日は鶴の間で8時間というロングプレイだったんですけど、まず8時間って単純にトイレとかってしたくならないんですか?
j:それさっきも他の人に聞かれたんですけど(笑)、出ないんですよ。
★そうなんですか?ストイックになるともよおさないんですね。
j:そう。さっきヒカル君(blast head)とも話してたんだけど。出ないね、って。今まで何度かやってるんだけど、その内の1回くらいは行ったことあります。
★曲をかけたまま、っていうことですか?
j:そうですね。でもほとんど無いですよ。
★じゃあお腹減った、とかも無いんですか?
j:腹は…終わる直前に気付いたらいきなり「あ、やべ」って(笑)
★(笑)
j:最中はそんなこと言ってる場合じゃないんで。
★そうですよね。
j:多分忘れちゃうんでしょうね。
★なるほど。でも昨日は8時間なのに最初から結構上げてましたね。
j:そうですね。
★長い時でもいつもあんな感じなんですか?
j:いや、割とゆっくりジャズとかから上げていく時もあるし、でも今回はスタートが24時だったから既にやる気満々な人が多いだろう、と思って。
★ああ、なるほど。鶴の間は何回目だったんですか?
j:もう4回目かな。
★今大阪でもすごく注目されてるクラブなんですけど、印象はどういった感じですか?
j:あそこは自分の身内がやってる所で、やっぱり毎回成長して進歩しようとしてるところがすごく人間味があるっていうか。生き物っていう感じがすごくする。会社として経営してるクラブとはまた違って、人が動くことによって動くクラブだな、って。
★そうですね。でも昨日は最後のほうまでたくさんのお客さんが踊っていましたしすごく良い夜だったと思います。
j:ああ、いやまあ〜、まだまだです(笑)
★(笑)ではアルバムの話に行きたいと思います。まずアルバムタイトルの『MOMENTOS』という言葉なんですが、英語じゃないですよね?
j:スペイン語です。“moment(=瞬間)”と同じ意味ですね。
★由来があれば教えて頂けますか?
j:それはたくさんあるんだけど、まず“momentos”っていう曲が入ってるキューバの女性歌手のCDがあって、それを知り合いから借りて、その後キューバに行って結構聴きこんでて。それにインスパイアされてた、っていうのもあるし。あとタゴールっていうインドの詩人を福岡の友達に教えてもらって、その人の詩の中に“瞬間”っていう言葉が出てくるんです。アルバムの中にもその詩を入れたりしてるし。それも理由の一つかな。
★なるほど。
j:まあ実際に自分のやったことも、いろんな所で瞬間、瞬間、を録音して、それを繋ぎ合わして、ってことだし。まあそんな感じで“MOMENTOS”って。
★なるほど。思い入れのある言葉と言うか、いろんな意味が含まれてるんですね。
j:そうですね、思い入れって言ったらもちろんいっぱいあるけど、でもまあ普通に…成り行きで(笑)
★(笑)僕もサンプルをいただきまして、聴かせてもらいました。素晴らしい作品だと思います。まずmoochyさんが感じるアフリカンテイストな音楽の魅力を聞かせてもらえますか?
j:やっぱり生命力。それはすごく重要かな。文字通り“命の力”って言うか、“生きようとする力”って言うか。そういうのは重要なテーマでした。実際にアルバム自体も、まず生命力っていうのはありながら、プラス大衆的、っていうのはあったかな。でも僕自信は“アフリカ”っていうのはそんなに意識してなくて、どんな世界でも、それはモンゴルでもブラジルでもペルーでも、あとは東京でも青森でも、そういうどこでもある日常的な感覚、バイブレーション…。それは僕たちの世代だけじゃなくておばあさんから小さい子まで。そういう所で流れる、例えば子守歌みたいなモノとか。
★はい。
j:僕は子守歌と宗教儀式の音楽が究極の音楽だと感じるんです。つまり対象が有形と無形っていう意味で。自分の愛する子供や孫に対するモノと、神っていう漠然としたモノと。今回もそういう結びつきって言うか、その中でも人間が生まれてからずっと続いてきた連なりがあるわけで。自分も年老いて死ぬし、また生まれてくるものもあるし。シャーマニックな、神に捧げる曲なんだけど、どこにでもあるような、そういうのを自分なりに求めてた。
★なるほど。制作は主にキューバですか?
j:うん。NXSっていう僕のバンドのメンバーがキューバに住んでたからそこに門戸が開いてて、「来なよ!!」っていうヴァイブがあったんで。自分がキューバマニアなわけじゃないんだけど、たまたま縁があってすぐに行けて。アフリカはモロッコとか行ったことあって、もちろん好きだし興味もあります。アフリカっていうのは根元的にどんなミュージシャンも絶対に無視出来ない人類のルーツ的な部分だし。
★そうですね。
j:だからもちろん絶対に重要だけど、今回はそういう強烈な原始的なものっていうよりは、バーやレストランや家でかかるような、そういうヴァイブレーションにもチャレンジしたかった。自分の中でそれが最終的な結果としてどうなるかは分からないけど。僕は音楽をジャンルではやってないけど、ヴァイブレーションには領域があると思ってて、それにチャレンジしてる。ジャンルで話をするとビートとかで判断されるから「いろんな曲をかける」って思われるかもしれないけど、重要なのは流れてる雰囲気、その複雑さとか深さとか。音楽を創ってるのもそういう独特のフィーリングを表現したいからだし。
★じゃあビートとかジャンルとかじゃなくて、根底に流れるフィーリングみたいなものを形にしたのが今回の『MOMENTOS』だってことですね。
j:そうですね。それはすごく注意しました。どんな状況であっても、例えば東京の青山のど真ん中であっても、福岡や福岡みたいな田舎でも、オーストリアのウィーンでも、どこにいても揺るがないヴァイブレーションみたいなものはキープしたかったから。音響的なこと云々って言っても、それも耳のことじゃなくて、その音を聴いた瞬間どういうイメージとか感情が湧くのか、そういうのはすごく意識したかな。
★なるほど。つまりアフリカ的な音楽がやりたかったんじゃなくて、雰囲気とかを大事にしてたら、結果としてああいったアフリカテイストなモノが出来たということですね。
j:そうそう。フィーリングとしてそう思ってくれたら幸いだし、僕は全然アフリカは意識してなかったから。アフリカって言っても広いから一概には言えないかもね。でも憧れって言うか、自分でもあの大陸には入ったことはあるけど、まだまだ未知な部分はあるだろうし。常にインスパイアされる所ではあるかな。
★そうですね。moochyさんは“JUZU”っていう風に名乗られることもあるわけですが、それも先ほど言ってた例えば家族が連なっていく、そういった意味でのJUZU(=数珠)なんですよね?
j:そうですよ。元々は昔スケボーやってた時に首に数珠を3本くらいぶら下げてたから、それで“ジュズメン”とか言われてて。それが16,17歳くらいかな。その時は別に深く考えてなかったけど。moochyっていう名前の持つイメージに少々うんざりしてる所があって、その時にもう一個名前がほしいな、って思って。そういえばジュズって言われてたし、数珠っていう意味もちょっとドープだけど、僕は結構仏教的な考えも持ってるんで。意味としては有りかな、って。
★仏教の中でもたくさんの思想がありますよね?その中で特に自分の中で音楽と共通するような部分っていうのはありますか?
j:仏教的じゃないかもしれないけど、螺旋的な感覚。サイクルとか。
★輪廻転生とか?
j:そうだね。螺旋的なモノっていうのはグルーヴの中にも必要だと思うし。僕が曲をかける時はどんな曲でも螺旋的なグルーヴっていうのは意識します。あんまり直線的にならないように。そうすることによって時間を超越するような感覚が得られる気がするから。
★なるほど。お話を聞いてたらやっぱり実際に音をどう鳴らすか、どう創るか、っていうより例えば仏教的な考えであったり、そういう面を大切になさってるんですね。
j:そういう所もチャレンジと言うか、ジャンルなんてもはやナンセンスな話になってるし。万国共通で伝えるために、こうやって今僕が大阪の人と友達になって触れ合うために、連なりだとか、そういう所を大事にしたいですね。自分がとってる手段はコミュニケートって言うか、何か伝えたい、自分の意見を言いたい、そういう小説みたいな感覚もあるだろうし。ストーリーがあって、いろんなモノに影響を受けてるから。
★はい。
j:例えばブラジルに行った時のこととか。9,11の翌年の2002年の2月にブラジルとニューヨーク行ったんだけど、そこですごく対比的に南半球と北半球を感じて。そこでもインスパイアされたし、後は、“LIFE FORCE”っていう東京のパーティーがインドのヒマラヤでやったときに同行してDJもしたんですけど、プレイ前に一人でガンジス川まで行ったりして。そこからサールナートっていうブッダが最初に説法を説いたと言われている場所に行ったり。そこはすごく景色が広くて、巨石とか木がただ生えてて青い空がただ広がってて。そこに行くと日本の仏教のイメージ、それはジュズとも関係してくるけど、“金ピカで黒光り”って言うのと対極にあるな、なんて思って。“無我”って言うか。すごくスペーシーな世界がそこにはあって。それにもすごくインスパイアされたかな。
★そういったスピリチュアルなモノを求めて旅に出たりなさるんですか?
j:う〜ん、スピリチュアルっていうほどじゃないけど、単純にガンジス川くらいは見ていきたいなって。そこでインディージョーンズばりのトラブルに巻き込まれたり(笑)
★(笑)なるほど。そう言えばCDを聴くとフィールドレコーディングしたような音が多く使われているように思うんですが、旅先なんかで録ったりするんですか?
j:それもあるしCDの音もあるし。フィールドレコーディングって言うか、そういう意味ではスタジオで録ったのは1曲くらいで、ほとんどは公民館とか野外ライブハウスとか。向こうは町の雑踏が結構良い音してるから、外の音が入ってもそれ自体がアンビエンスとして機能するかな、って。
★そうですね。でも日本じゃなかなか出来ないことですよね?
j:でも福岡の自分のスタジオは古墳が裏にあって、目の前に森が広がってるような所で。そこにある駐車場で福岡の友達のパーカッショニストとNXSのパーカッショニストと合同で、ほとんど初対面でセッションしたものを録音してそれをキューバに持って行って、それを使ったりもしました。
★へえ。
j:つまり瞬間、瞬間を繋ぎ合わせてるんだね。人と人が音楽とか一つの媒体を通じて繋がるじゃないですか。会話だけだと「お前は何?」ってだけだけど。そこに音楽があるだけでみんな音楽に対して集中してクリエイトしようとするから。それはすごく面白かった。
後編に続く。6/17、unagidani sunsuiにJUZU a.k.a MOOCHYがDJで来阪。