JAZZTRONIK

JAZZTRONIK
野崎良太が率いる特定のメンバーを持たない自由なスタイルのプロジェクト名のことである。
1998年より、インディーズのフラワーレコーズより2枚のアルバム2枚のミニアルバムをリリース。
2001年イギリスのレーベル"Counterpoint"よりアルバム"Inner Flight"をリリース。 これまでにプロデューサーとして、Mondo Grosso、葉加瀬太郎、bebe、Sandii、唐沢美帆、ゴスペラーズ等、数多くのアーティストの楽曲提供、編曲を行う。また、リミキサーとしても、bird、m-flo、modaji、London Elektricity(a.k.a.IZIT)、福富幸宏、中島美嘉、などの作品を手掛けている。
2003年4月に発売したアルバム"Set Free"(フラワーレコーズ)に間髪空けずに、6月にミニアルバム"Horizon"を発売し、7月に行われた渋谷クアトロ、心斎橋クアトロのワンマンLiveでは、14名編成にてその音楽性を見せつけた。
また、Especial Distributionよりリリースされた12inch single「Dance with me 12inch version / SAMURAI-侍」はDanny kribit、Louie Vegaなど多くのトップDJに支持を受け、再びChez musicより12inch single「SAMURAI-侍」をアメリカ及びヨーロッパ各地でリリースする事になる。
2004年、Tokuma Japan Communicationsからalbum「七色」、maxi-single「MADRUGADA/TIGER EYES」のリリース…さらなる飛躍が期待される2004年、Jazztronik=野崎良太は間違いなくシーンに旋風を巻き起こすだろう。
『キャニバル・ロック』と『エン・コード』、この二枚合わせたものがジャズトロニックですっていう。
9月30日に心斎橋クラブ・クアトロで行われたジャズトロニックのライブ・レポートに続き、ここではそのライブ前に行ったジャズトロニック、つまり野崎良太のインタビューを掲載する。8月31日にリリースされた最新アルバム『キャニバル・ロック』についての話を中心に聞いてきた。同アルバムと続けて9月にリリースする予定だったものの、リリースが延期している『エン・コード』についても若干触れているので、お見逃しなく。 饒舌に、しっかりと話してくれる彼からは、"伝えたい"という気持ちがストレートに向かってきたことは、特筆すべき印象だった。
-最新アルバム『キャニバル・ロック』のことから聞きたいと思います。このアルバムを聴いて、まず感じたことが「質の高いアルバムだな」ということでした。
野崎良太(以下N) ありがとうございます。
- 目新しさや斬新さというよりも、今までのジャズトロニックの集大成、総括という印象でした。
N まさにそうで、『キャニバル・ロック』に関しては、目新しさはあえて入れていなくて。もちろん昔の曲とは全然違うんですけど。なんでかっていうと二枚連続で出すっていうのがデカくて、逆に二枚目のほうは目新しさしかないんですね。今までやってなかったようなことしかやってないんで。その二枚合わせたものがジャズトロニックですっていうことをしたくて。いろんな雑誌とかに、なぜか「オシャレ・ブラジリアン・ハウスの?」みたいに書かれちゃうんですけど、そういうのをあんまり(DJで)かけることもないし、作った曲でもあんまりないんですね。だからなんで言われるのかよくわからなくて。きっと昔やった誰かのリミックスとかがそういう感じで、たまたまそれがいろんな人の耳に入ってそういうイメージがついちゃったのかなと。ただ僕としては、それは早く無くしたいことなんですね。例えばそのイメージのままお客さんが僕のDJを聴きに来ちゃうと、「あれ?」って思っちゃうだろうし、それってそのお客さんも可哀想だし、やってる僕のほうもポカンとした顔してる一人を見て「大丈夫かな?」って思っちゃうし、っていうのがずっとあるんですね。で、今回出す二枚でそれを払拭しようと思って。
今回新しかったのは、今までって、もうすでにアーティスト活動してる人とコラボするっていうのはあんまりなかったんですね。僕はあんまり協調性がない人なんで。ある意味なんかちょっと離れ小島みたいな感じだったんで。それに世の中的にフィーチャリング・ブームみたいになっちゃってるじゃないですか。そこでも悩んだんですけど、まあやってみようかなって。いつもだったらMYEちゃんってコが歌ってるんですけど、今回は今井美樹さんに頼んで歌ってもらったり、ゴスペラーズの黒沢さんにやってもらったり、あと外国のアーティストだと今、ツアーに一緒に来てますけど、元ガリアーノのロブ(・ギャラガー)に頼んだり、あと僕の大好きなフローラ・プリムに頼んだりって。二枚目のほうでいうと、ヴァイオリンの、僕の師匠様のような葉加瀬太郎さんが参加してたり、太鼓の鼓童がいたり、マルコス・ヴァーリがいたり、半野(喜弘)さんや福富(幸宏)さんもいたりって、ホントいろんな人が参加してて。
今井美樹さんは「なんで今井美樹さん?」ってみんなに聞かれるんですけど、すっごいファンなんですよ、僕が。いつも歌の曲を作るときに、声のイメージで浮かべてるのが美樹さんの声なんですね。今回ももちろんそうやって作って、それもMYEちゃん用に作ってたんですけど、美樹さんの声が浮かぶんなら美樹さんに頼んでみようってことになって。頼んだら快く(笑)。でも、曲調があまりに美樹さんのイメージと合わないから、みんなそれが今井美樹と思わないらしくて。
- 結構すんなり録れたものなんですか?
N あっという間に。めちゃめちゃ上手いですよ。
-ああいったリズムでも?
N 全然。布袋さんに鍛えられたって言ってましたよ(笑)。
-そうなんですね。で、今さっきの話にも名前が出てきたロブ・ギャラガーに関連するのですが、『キャニバル・ロック』のクオリティの高さや雰囲気が、ちょうどロブの現在のユニット、トゥー・バンクス・オブ・フォーの『スリー・ストリート・ワールズ』を思い起こさせました。
N ガリアーノも好きだし、トゥー・バンクス・オブ・フォーも好きだし。トゥー・バンクス・オブ・フォーに関しては、初めて彼らが出したのが5、6年くらい前かな? すごい衝撃受けたんですよ。で、それが「ガリアーノの人なんだ!」と思ってたときに、たまたまロブと知り合ったんですね。ジャイルス(・ピーターソン)に紹介してもらって。その後もロブとはメールでやり取りはしてて、「いつかやりたいね」って言ってて。でも、それなりのものを出すときにじゃないとしたくなかったし、出したときにロブを呼んでライブができて、それくらいのお客さんが来てっていう状態になるまで、ロブとはできないなって思ってて。で、このタイミングでやっとやれたんですよ。
-ロブが参加した曲(「SOUTH OF THE BORDER」)は、ガリアーノやトゥー・バンクス・オブ・フォーにもない、新しいヴォーカル・スタイルですよね。
N そうですね。
-あの曲を聴いて、何と言うか、ビックリしました。「誰がこれを歌ってるのかな?」って見てみるとロブだったので、余計に驚いて。
N 曲のタイプとしても、ラテンのモントゥーノにヒップホップの感じのリズムがのってるのって、実はあんまりないんですよ。しかも途中から(BPMが)速くなるし。それで、僕も作ったはいいけど、どうしたらいいものがわからなくて、ロブに「とりあえず聴いてみて」って送ったんですよ。そしたらロブがあっという間に書いちゃって、あっという間にできあがっちゃって。 一枚目の『キャニバル・ロック』は躍動感のある、赤いイメージで、二枚目はクールな、青のイメージなんですね。これのどっちもいけるのはロブなんですよ。おもしろおかしくMCもやれるし、かっこよくもポンってできるし、そういうパフォーマンスができるのってロブくらいしか思い浮かばない。この間も福岡でライブをやったんですけど、あっという間に客を飲み込みますからね。すごいですよ。
-今もちらっとおっしゃっていたことですが、今作のテーマが情熱の「赤」ということですが、そのあたりを詳しく聞かせてください。
N 南米的でクラブのフィルターを通ったモノとして、ラテン、ブラジル、ファンク、っていう感じでまとめて。難しく考えずに楽しんで聴いてもらいたいなって。今までのアルバムでは、"ジャズトロニックっていうものを知ってもらおう"っていう気持ちがずっとあったから、一枚のアルバムのなかに全部詰め込んでたんですね。南米大陸寄りなモノと、ヨーロッパな感じのモノと、あとは僕のピアノの部分と、日本語の歌とっていうのがギュって入れてたんですね。でもアルバムって70分くらいしか入らないし、しかもクラブ・ミュージックってアタマとケツを入れるとものすごい長さになっちゃうから、そんなに曲数が入んないんですよ。だから、いつも不完全燃焼になっちゃってて。とことんやったやつをちゃんと出すには一枚には収まらないから、二枚で出そうってことになって。始めはインストモノと歌モノにわけようかなとか、男の人とやったモノと女の人とやったモノでわけようかなとか、いろいろ考えてたんですけど。
-ラテン~ブラジルといった南米の匂いと、ブロークン・ビーツやクラブ・ジャズのクールさ、これは生音とプログラミング、ということでもあるのですが、この両者のバランス感覚に長けているな、と感じました。
N バランスは意識しますね。それはミュージシャンだけじゃなくてDJもずっとやってるっていうのはデカいかもしれないですね。
-DJ的な視点がジャズトロニックに反映されると?
N そうですね。DJの現場から得るものは大きい。ミュージシャンをやってるだけでは得られないものはたくさんありますね。DJやっていて一番感じるのは、今、情報ってかなり氾濫してるじゃないですか。特に東京ってそうなんですね。たまにどっかのクラブに遊びに行ったりすると、「なんか頭でっかちな客が多いな」と思うパーティーもあるんですよ。「こんなんで楽しいのかな?」って。逆に地方っていうのが実はすごく外国っぽくて、楽しい音楽に素直にみんなが反応するんですよ。そうやって毎週末のようにいろんなところでやってるから、こんな曲がみんなの身体が動きやすい曲なんだなーっていうのが僕の頭のなかでイメージとしてあるんですね。 あと、僕は元々テクノとかハードハウスばっかだったんですよ。大学生の頃。ヒップホップからテクノ、ハードハウスにいって、そこがすごく長かって。
-テクノやハードハウスをプレイするDJもされていたんですか?
N そうだったんですよ。僕にDJを教えたのはYO*CっていうDJなんですよ。今で言うトランスのDJなんですけど(笑)。レコードの頭出しとか教えてもらって。
-それってまだワープハウスとか言われていた頃ですか?
N そうそうそう(笑)。それでYO*CがDJして、僕がそのときやってた、テクノ・ユニットでライブをやって、その後にMAKOTOがDJやって。
-LTJブケム主宰<グッド・ルッキング>からリリースしているDJ MAKOTOですか?
N そうそう(笑)、彼は僕の大学の後輩なんですよ。で、彼にもDJやらせて、イベントやってたんですよ。あるとき彼が「ブルーってクラブがあるらしいですよ」って言ってきて、それで一緒に行ったんですよ。10年くらい前かな、ちょうどその頃って毎週月曜に松浦(俊夫)さんがやってたんですよ。それは月曜だから人もそんなに多くないんですけど、そこでは僕が今まで聴いたこともないような音楽でオシャレな人たちが踊ってるんですよ!見たこともないようなカッコしてる人たちが!ホントに、ギャグみたいなカッコしてる人とかいるんですよ?ルパンみたいな人とかいましたもん、ホントに。そのときはブラジル音楽は聴いたことあったんですけど、クラブで踊るサンバなんて聴いたことなかったし、「そこまで人を踊らせる曲があるんだ!」って、「うわっ、スゲーッ!」って思って。やっぱり自分が作曲科に行ってたから、すごく音楽に興味があるし、「普通に"曲"で人が踊るんだ!」って衝撃受けて。そこからそっち方面に行ったんですよ。 あと、DJやってるときにすごく面白がられるのは、どうやらこういう感じのことをやってる人にしてはツマミをすごいイジるらしいんですよ。それはもう、癖で(笑)。
-(笑)、ハードハウス時代からの癖でEQを触ってないと不安ってことですね(笑)。
N なんかね、ダメなんですよ。ブレイクとかでハイ上げないと気が済まない(笑)。彼(=同席していた徳間ジャパンのスタッフ)はメタモでそれを見てますからね(笑)。
-そうですね、今年はメタモルフォーゼに出演されていましたが、どうでしたか?
N DJはね、いつも通りやったんですよ。生音な感じの自分の曲からポンって始めて、そこからいきなりロブとの「SOUTH OF THE BORDER」にして、そこからしばらくヒップホップにして、徐々にアゲていってってしたんですけど。もう、今までこんな盛り上がりは見たことがないっていうくらい盛り上がりましたね。革命を起こしたって言われました。だってメタモルフォーゼに誘われたのはいいけど、なんで誘われたのかもよくわかんないし、「アウェイじゃん!」って感じだったんですね。でもすんごい人が集まってくれて。後で聞いたら、その日のそのテントのなかで、一番人が多くて盛り上がってたらしいですよ。意外でしたね。 (註:野崎良太が出演したのはメタモルフォーゼの「Planet Stage」。他にEYE、Kaoru Inoue、K.F. a.k.a. Calm、KIHIRA NAOKI、JUZU a.k.a. MOOCHY、DJ KLOCK、DJ BAKU、SHIRO THE GOODMAN、DJ NOBUが同ステージに出演した)
-アウェイで大勝したんですね。
N イラン行ってサッカー勝った、みたいなね(笑)。
JAZZTRONIKインタビュー後半では、引き続き『キャニバル・ロック』についての話に加え、自身のパーティー"JAZZTRONICA!!"への思いや、インターネットという手段についての思い、次回作『エン・コード』について話してくれています。ロブ・ギャラガーから野崎良太へのコメントも最後に紹介しています。