Goth-trad

Goth-trad
ミキシングを自在に操り、アブストラクトなアプローチでダンス・ミュージックを生 み出すサウンド・オリジネイター。 2001年12月にフランスの船上パーティ"Batofar(バトファー)"で海外イベントに初登 場。独自のサウンド・コラージュで話題を集めた。2001年、秋本"Heavy"武士ととも にREBEL FAMILIAを結成。ソロ、GOTH-TRAD(ゴス・トラッド)として、2003年4月 に1stソロ・アルバム「GOTH-TRAD I」を発表。国内でソロ活動を本格的にスタートす る。同年秋にフランス・ツアーを敢行。翌2004年1月、THE MARS VOLTA東名阪ツアー のオープニングアクトを務めた。5月〜6月にもヨーロッパ・ツアーを敢行。11月には アート・リンゼイの東京公演にオープニングアクトとして出演。2005年1月、2枚目の ソロ・アルバム「The Inverted Perspective」をリリース。同年3月、韓国ソウルで 開催された日韓友情年イベントの"KOREA-JAPAN Road Club Festival 2005"に出演。 帰国するとマッド・レイヴと称した新たな音楽性を打ち出し、怒涛のライブラッシュ、 そして2005年11月19日、ニューアルバム「Mad Raver's Dance Floor」を発表。

GOTH-TRAD
"Mad Raver's Dance Floor"
ALBUM CD/POP-101/2005
POPGROUP Recordings
2000yen(tax.incl) 2005.11.19 Release
LIVE SCHEDULE
11.03(Thu) @ Germany-Berlin Watergate Club
11.11(Fri) @ France-Paris Divan du monde
1 1.12(Sat) @ France-Metz Caveau des Trinitaires
11.19(Sat) @ 名古屋 Club STREET
11.22(Tue) @ 徳島 CLUB UNDERGROUND
11.23(Wed) @ 大阪 TRIANGLE
11.26(Sat) @ 宇都宮 NEST
12.02(Fri) @ 東京 UNIT
12.09(Fri) @ 京都 WHOOPEE'S
12.10(Sat) @ 姫路 fab-space
12.11(Sun) @ 熊本 Django
下手にアンダーグラウンドのドープなアーティストよりその辺りのメジャー系のクラ ンクやヒップホップの方が新しいな、って
およそ音楽には可能性を求めるモノと普遍性を求めるモノがあるとしよう。さらに時 にその二つのベクトルは重なり合い、それは例えばビートルズの奇跡、と呼んでもい いのかも知れない。
GOTH-TRAD。これまで2枚のアルバムをリリースしてきた彼を、僕自身は可能性を求め る音楽を作る人だと思っていた。「音楽が生まれてからこれだけいろんなモノが出揃っ た今、それでもまだこんな音楽もあるんですよ」という提示を主張とする人だと思っ ていた。それ故に彼の音は先鋭的でかつ他に類を見ないものであった。しかしそんな 僕の認識不足は1枚のアルバムによって露呈されることとなった。
それは11月にリリースされるGOTH-TRADの3rdアルバム『Mad Raver's Dance Floor』で ある。このアルバムで彼がビートルズになったとは言わない。しかしこのアルバムは 図らずも彼が常に追い求めてきた可能性と彼のルーツとなった先人の功績を讃えた記 録となり、GOTH-TRADが新しいフェーズに突入していることを雄弁に物語っている。誰 も予想出来なかった新しいGOTH-TRADがここにいる。
★11月に新作『Mad Raver's Dance Floor』がリリースされるんですよね?2ndアルバム『The Inverted Perspective』に続いて1年に2枚のアルバムがリリースされるわけですが、今回は制作はいつ頃からなんですか?
GOTH-TRAD(以下GT):実質今回のアルバムの構成で作り始めたのは2月くらいですね。新しいビートを作り始めたのが3月くらいです。
★ではそこから4〜5ヶ月で。
GT:そうですね。以前から作ってたトラックもあるし、セカンドアルバムの制作中に作ったトラックもあるんだけど。ほとんどは今回のアルバムに向けて新たに作りました。
★そうですか。1st、2nd、と考えると今作は少し方向性が変わってますね。まず最初「コツコツコツ・・・」っていう人が歩く音と「ギー」ってドアが開く音から始まります。あれはやっぱりGOTH-TARDの新しい幕開け、というような意味なんですか?
GT:そうですね。それもあるし、『Mad Raver's Dance Floor』というタイトルから、俺が"Mad Raver"(*1)のために用意した部屋、って言うか。ダンスフロアの扉を開けた瞬間から始まる、みたいな。
★ああ、なるほど。
GT:それと新しい一面、違った一面を見せたい、っていう意味で扉を開ける、っていう。
★まあタイトルにも"FLOOR"っていう言葉があるようにこれまでのモノと比べるとやっぱりフロア仕様ですよね。まず元々フロアやクラブ仕様のモノを作ろうと思ってたんですか?
GT:そうです。セカンドを出す前から。今作のアルバムリリースは早い方がいいな、とも思ってて。それで次はビート主体のフロア向けのモノを作ろうとは結構前から思ってましたね。セカンドが出た後に思い付いたんじゃなくてね。
★それは何かきっかけがあるんですか?
GT:やっぱりね、ビートもので、UKのグライム(*2)とか西海岸のクランク(*3)とか自分が熱くなるものが出てきて、っていうのもある。それらが自分の作っているモノと感覚が近いな、と思った。
★なるほど。やっぱりグライムですか。
GT:うん。グライムに関しては俺が最初にはまったレイヴテクノとかハードコアテクノとかね。90年代初期のそういった匂いがプンプンしてて。イギリスの方では伝統的な流れがずっとあったみたいで、それが自分の中で「ああ!!」みたいな。「懐かしいけど新しい」という感覚をグライムの中にも感じた。レイヴテクノ辺りは、前から本当にはまってて。もちろん今も、ファーストとかセカンド作ってる時も聴いてて。今でも全然かっこいいな、って思うし。
★その90年代初期のハードコアテクノっていうのは例えばプロディジーに代表されるものですか?
GT:そう。あとはオルタネイト(*4)とかね。あの辺のものから始まって。あの時期はLFOとかも良く聴いてて。その頃はブリープテクノ(*5)って呼ばれてた。
★グライムっていう言葉にも表されているように、今までのGOTH-TRADさんの作品と比べると、本当にまずビートですよね。ビートが打ち出されてる。もちろん今までもビートのかけらはあったんですけど、8、4、っていうパターン的なビートは中々見つけにくかったわけで。グライム等の影響で、ということだったんですね。
GT:影響は絶対あると思う。ただ向こうのコピーは出来ないですよね。同じようなことは出来ない。それはやっぱり向こうのオリジナルの2ステップとかあるでしょ?それと俺は2ステップとかはあまり聴いていなくて。グライムってどっちかって言うとUKガラージとか2ステップの匂いがして。もちろんドラムンベースの要素も強いんだけど。聴いていない2ステップの要素も強いしやっぱりコピーは出来ない。それに "MCが引っ張ってる"感じがするから、俺はそうじゃないものを作りたいな、って思っていた。
★なるほど。
GT:ビート的には向こうの影響は受けてると思う。逆に、俺は昔のハードコアテクノから得た自分の持っているものを出したいな、っていうのもあったかな。
★昔から培ってきたモノと今受けてる影響を混ぜてるんですね。
GT:そうですね。あとクランクミュージックとかサウス系のヒップホップとかも結構気になってて。下手にアンダーグラウンドのドープなアーティストよりその辺りのメジャー系のクランクやヒップホップの方が新しいな、って俺は思ってたりした。
★その新しさっていうのはどういったことなんですか?やっぱり誰もがアンダーグラウンドっていう言葉だけでそれを評価するようになってるからですか?
GT:なんだろう。リル・ジョンとかクライム・モブとかサウス系のアーティストが元々アンダーグランドのヒップホップの雰囲気を持ってるアーティストが多いな、って思ってたんですよね。例えば暗くて、重くて、悲しくて、恐くて、っていうものは結構聴いている、っていうのがあって、そういうものにドップリはまってたから、逆にニューヨークのキャムロンとかリル・ジョンとか少し違った流れのヒップホップに耳が行くんですよね。あとはティンバランドとかファレルとか。そっちの流れのトラックがすごく音楽的で、やってることもオリジナルで、そっちの音楽にすごく魅力を感じるんですよね。
★なるほど。"アンチ・メジャー"みたいな空気がどうしても世間的にはあるじゃないですか?そういうんじゃなくて。
GT:そうですね。以前にはアンダーグラウンドに面白いものがたくさんあったと思うんですよ。だけど今は、逆にティンバランドとかがやってることにも興味がいくんですよね。ビートの打ち方とかが新しいな、って。昔からヒップホップをずっと聴いてるわけではないけど、ヒップホップの要素って言うか、「ローファイ感を出しつつその中でビートの打ち込み方とかハットの打ち込み方とかで新しい」ものを作り出してる気がして。エレクトロニカのように「音は新しいけど打ち込みは普通」っていう所より、普通の音で打ち込み方とかに変化を付けたいっていうものあって、グライムとかって結構そうじゃないですか。普通のリズムマシンを使ってるけど打ち込みがすごくオリジナリティがあったり、そういうモノのに結構惹かれますね。クランクとかも、アゲアゲなヒップホップとかにもね(笑)。
★確かに『Mad Raver's Dance Floor』の中で鳴ってる音自体は懐かしい音ですね。
GT:今回もスタンダードな音で構成したい、と。打ち込み方で変化を付けたくて。今まで無かったビートって言うか。
★ではファースト、セカンドでは逆に"音自体の新しさ"を追い求めてた部分もあったんですか?
GT:う〜ん、ただ自分にとっては、結局音って感情とかを表現する媒体として出すものだから、まあ素材が変わっただけだと思う。
★音に対するモチベーションなんかは別に変わってない、っていうことですね。
GT:そう。例えばビートが入る間(=ま)とかベースが抜ける間(=ま)、っていうのは完全に自分の感覚だし。感じが変わっても、小節があって、BPMがあって、ノイズが持続音で「バー」って入ってて、上にカットアップの音が入って来て、とか、やってることは何も変わってない。操作するのにもミキサー上だし。家で制作するのにもパソコンでやってるわけだしね。結局やってることは同じだから。ただ素材を変えてるだけで、もちろんアルバム毎に表現したいことが同じとは思っていないから。今回は特にクラブのフロアのことをイメージしてて。セカンドは東京の街のゴミゴミとした場に対して自分が「おかしいな」って思ったり「嫌だな」って思う部分とかが出てると思うんです。
★確かにセカンドはそうですね。
GT:うん。今回はそういう部分も含みつつ、どちらかと言うともっとカオスな状況とか、クレイジーな面とか、いろんな要素、いろんな情報があって、そういうカオティックな部分。後はクラブでの体験を入れたい、とかそういう部分を入れていきたかった。
★なるほど。ではGOTH-TRADさんはここ最近いわゆるクラブミュージックのアーティストとのセッションだけではなくて、現代音楽と呼ばれるノイズやインプロ(=即興)アーティストとの共演されることがありますよね。そういう音楽との接近から得たものは何かありますか?
GT:やっぱりね、ああいう世界って雰囲気で結構持っていけるのかな、って思ってたけどそうじゃなくて。テクニックが必要で。間(=ま)とかが命。それって結局テクニックに繋がってくるから。
★なるほど。
GT:自分ではノイズをやってる時もインプロ(=即興)をやってる時もビートもののノリで、リズムもの的なノリで作っていた、っていうのがあるから違う体験とかは、あるよね。スイスでKoji Asano(*6)さんと一緒にやったんですけど、Asanoさんは45分くらい、持続音でずーっとやるんですよ。でも自分は、音のバリエーションで持っていくタイプなんで。そういう持続音や、一つの音と、本当にミニマルな持って行き方がある、っていう体験ができた。長い間(=ま)と短い間(=ま)と、もちろん音色の種類にもよるし、そういうのは今まで体験したことが無かったことだね。
*1:Mad
Raver(マッド・レイヴァー) 商業的な波に飲み込まれた「Raver」は音楽以外のRaveの要素によって形だけのものとなってしまった。Mad Raverとは、最高のダンスミュージックを追い求める、真のRaverのことを指す。
*2:グライム 2000年代の最初の音楽的ムーヴメントと言える「グライム」。UKアンダーグラウンドシーンで脈々と続いてきたUKガラージの最先端の音楽であるそれは、ヒップホップやレゲエ、ドラムンベースといった音楽を雑多に配合し、テンポダウンした低音を強調したスカスカなトラックに荒々しいラップ。"Grime=ヨゴレ"というのが相応しい、今最もリアルなストリートミュージック。
*3:クランク サウス系バウンスビートをベースにしたフロア向け、パーティミュージック。ピッチの遅いビートに、へヴィーなべース、そしてシャウトや賭け声が特徴のダンス・ミュージック。そのクランクの提唱者がリル・ジョン。
*4:オルタネイト(ALTERN8) THE KLF、The Shamenなどと90年代初頭にテクノシーンを賑わしたUK出身のテクノユニット。
*5:ブリープテクノ 90年代初頭にエレクトロミュージックを代表する初期warpレーベルを代表するアーティストLFOが確立したジャンル。テクノともアンビエントとも取れる当時のテクノシーンで一世を風靡し、現在のエレクトロミュージックの雛形とも言われる。
*6:Koji Asano 現代音楽からコンピュータミュージックまで幅広く音楽制作を行なう作曲家兼クリエイター。1993年からヨーロッパ各国でライブ活動を行なっている。2004年、ゴス・トラッドと共にスイス3都市にてイベントに参加。
GOTH-TRADインタビュー後半では具体的な音作りの過程やレベルファミリアの結成秘話など秘蔵トークが満載。