DJ YAS

DJ YAS
日本のヒップホップを語る上で欠かせないトラックメイカー/DJ/プロデューサーの一人。RINO LATINA II、GAMAと共にLAMP
EYEで1995年にレコードデビュー。以後、日本屈指のラッパー/シンガー達のプロデュースやリミックスを多数こなす。また海外アーティスト達とのコラボレーションも積極的に行う。2000年、初のソロ名義アルバムとシングルをリリース。オールインストのアルバム『ライト』は一部アメリカでも
流通され高い評価を得た。2002年にはTOMMY GUERREROとのコラボレーションミニアルバム『ANGLER FISH』をリリース。2005年9月11日5年振りのフルアルバム『SMOKING
GUN』をリリースした。シーンに再び強烈なインパクトを与えるであろう。
DJ YAS
http://www.dj-yas.com/
KEMURI PRODUCTION
http://www.kemuri.jp/

SMOKING GUN/DJ YAS(Hibachi Label)
ZEHB-2001/¥2,940

"ヒバチ!タイムス" Vol.1/V.A.(Hibachi Label)
ZEHB-1001/¥1,000

DJ YAS & RINO LATINA IIが
音楽を担当した映画
「TAKI 183」
http://www.taki183.jp
良い世の中にしたいと切に願ってる。希望を持ってる。
未来をみてるよ。
ところでそこの君、日本最強のDJ集団、と称されるKEMURI PRODUCTIONをご存知か
?今や伝説のイベント“鬼だまり”。DJ KRUSHを始め、日本を代表するDJたちが一度
に集い、10台ものターンテーブルを一度操った奇跡の夜から早くも10年。いまなお彼らは第一線で輝きを放ち続けている。
前回のDJ HIDEに引き続き今回はDJ YAS。昨年9.11にリリースされた待望のセカンド・フル・アルバム『SMOKING GUN』の興奮も冷めない今、DJ YASは何を思うのか。ヒップホップの魅力からアメリカ、そして世界への思いを馳せるDJ YASの言葉を受け止めろ。
―ヤスさんの新作『SMOKING GUN』はヤスさんが主催なさってるHibachi Labelからのリリースでした。このレーベルを始めた時の目的や意図、きっかけは何かあるんですか?
DJ YAS(以下Y) 俺1人の主催ではないよ。音楽を違った角度で携わっている人たちと始めたんだ。このレーベルは火鉢の中からはじける火の粉のような作品を作って出していこうというのが趣旨なんだ。新人、ベテラン問わず目的を共有出来るアーティストが中心になるよ。
―ヤスさん自身の作品で考えても前作の『ライト』と比べて今回の『SMOKING GUN』の大きく違う部分は、ラッパーやシンガーがフィーチャーされている面だと思います。何をきっかけにそういった“声”の部分にフォーカスするようになったんですか?
Y 1stアルバム『ライト』(全編インスト)を作った時も同時期に出したリーダーシングルではリノとエル・ダ・センセイやエイソップ、スムース・ビーというラッパーをフィーチャーしたw/ラップ作品も出しているよ。それまでも作品の多くは、基本的にはラッパーのトラックを作ることが俺の中では圧倒的に多かったんだ。『ライト』に関しては等身大の自分、つまりトラックだけで表現したいな、と思ってああいう形になった。

―自然体で作れば自分のトラックにはラップが乗ることは普通だ、と。
Y そもそもDJを始めるきっかけもトラックを作り出したきっかけも、まさしくラッパーとの作品作りだよ。ただ、今までの多くは俺のリード作品というのではなかったんだよね。今回は俺がリードした作品だというのが大きな違いで、そこで信頼のおけるラッパーを人選してお願いしたんだ。
―ではこの曲はこういうメッセージを伝えてほしい、というのはヤスさんの方からMCに伝えるんですか?
Y うん、今回のテーマは『SMOKING GUN』つまり動かぬ証拠という意味で、俺の辿ってきた軌跡、それこそが動かぬ証拠で、参加してくれたアーティストは長い付き合いの人達だけだよ。辛い時期も喜んだ時期も共有した仲間だね。そういうテーマは全員に伝えた。
―言葉っていうのはすごく直接的ですよね。意味を限定することも多いですし。ヤスさんは言葉を扱うのではなくトラックを作ってるわけですが、そもそもトラックを作る時にまず直接的なメッセージ有りきで作るんですか?
Y いや、テーマから作る事はあまりないよ。夢中で作った作品を客観的に聴いて、その時感じた事がメッセージになったりする。けど、それは俺のリード作品の時の話だよ。他アーティストの作品では、その時のリーダーがテーマやメッセージを決めてる事が大半だ。
―なるほど。ではHibachi Labelの今後の動きや展望は何かあるんですか?
Y うん、2006年は『HIBACHI TIMES』っていう毎回3曲入りの、いやインストを含めると6曲入りのコンピレーションシングルをシリーズ化して出していくんだ。1月に出るのが第1弾で2ヶ月に1回出していくよ。今回は名古屋で活動している、M.A.S.K.というラッパーとTETSUというシンガーと一曲作った。もう一曲は、ホームボーイでもあるIGAVOCKというラッパーの初ソロ作品。それと、もう一曲は我らランプアイのリミックスが今回の全貌だ。

―これに関してはトラックは全てヤスさんが作ったんですか?
Y そうだよ。
―では今後シリーズ化されていくものに関してもヤスさんのトラックに入れ替わり立ち替わりMCが入ってくる、ということですか?
Y 今の所はそうなんだけど、今後に関しては変わっていくよ。
―この『HIBACHI TIMES』に関してはコンセプトはあるんですか?
Y 冒頭でも述べたけど、新人、ベテラン問わず、実力はあるけど、知名度はこれからあげていくべきアーティストを紹介していくというのがコンセプトだ。型にはまっていようがいまいが、参加するアーティストにとって“自分”を表現する最高の場になって欲しいし存在感あるヒバチ!を作りたい。
―確かに『SMOKING GUN』の中にも今仰ったような“はじけた感じ”の印象を受けた曲は多くあります。
Y そう? ありがとう。そういう風に捉えられるのもすごく嬉しいし実際にそうなんだけど「全ての曲がそうか?」と言われるとそうでもなくて。表面的にはそういうはじけた感じではない曲もあるでしょ。それとね、設問からは逸れるけど、後半三曲が今回伝えたかった俺の気持ちに沿っているんだ。「今行われている戦争について」視点は任せるからそういう曲を書いてくれと頼んだ。そもそも、『SMOKING GUN』という言葉は、イラク戦争を始める為のアメリカサイドの一方的な言い分だったんだ。「イラクには大量破壊兵器があって、それをほっておいては大変な事になる」ってね。結果はみんな知ってるだろ? そんな物は無かったんだ。あの戦争は、本当に間違っていたんだ。途中で大義が変わった。歴史を辿ってみてもこんなひどい戦争ないよ。まあ、戦争に良いもんなんてないけど。戦争の正当性をマジに唱えてるのは一部の指導者だけだろ。罪も無い人達がいっぱい死んじゃうんだからさあ。天災じゃなく人災でね。
―なるほど。『SMOKING GUN』には数々の連想を喚起させる事実が付随してて、それは9月11日にリリースされたこと、星条旗をあしらった銃のジャケットであること、そしてイラク戦争下でアメリカが使った“動かぬ証拠”を意味する『SMOKING GUN』という言葉を引用したタイトルであること、などが主なんですが、ヤスさんはホームページ上でもアメリカという国に対しての思いを掲載しています。親米と反米の中での矛盾した気持ちというのは今もありますか? またポジティブな面とネガティブな面とは具体的にどういったことなんですか?

Y そうなんだ。矛盾しているんだよ。そう考えるのはきっと俺だけではないよ。目をそらす様システムが出来上がっているんだ。少なくともここ日本はね。俺から観て21世紀は“矛盾”という言葉がピッタリだよ。政治的にも国民感情的にも親米派は多いでしょ? テレビや新聞から伝わるニュースだって欧米側からの視点だしね。ファッションや娯楽に至ってはもうすっかり染まってるだろ? 例外に漏れずに俺もそうだったし。今は結構客観的だけど。とにかく好きなのに大嫌い。だからって目を背けちゃあいけないんだ。今、日本で起きてる犯罪の多くはそんなシステムの産物だよ。末期的事件が多いだろ? そういう意味ではネガティブな見方になってしまう。しかし、それじゃあ未来は切り開けない。良い世の中にしたいと切に願ってる。希望を持ってる。未来をみてるよ。ただ現実は危ない方向に突き進んでる。そんな事を考えだした矢先に飛び込んだ言葉が、『SMOKING GUN』という言葉だった。当時ニュースを観ていたら単純に『smoking〜』って言葉が俺の耳に飛び込んで引っかかったんだ(笑)。
―なるほど。言葉の響きもかっこいいですよね。「かっこいい」っていうと不謹慎かもしれませんが、『SMOKING GUN』って単純に響きがすごくかっこいい。
Y そう、不謹慎なんだけどその通り。俺の所属する母体名がケムリ・プロダクションだからね。だから俺のアルバムのテーマに相応しく感じたんだ。
―ではそういったことに自分がやってる音楽で何か表現できないか、と。
Y そう。俺の音楽というか願いがどこまで届くか、っていうのは分からないし、実際に今の戦場まで届くとは思ってないんだけど、だからって諦めて言わないというのでは、いけないと思ったんだ。せっかく表現できる立場にいるんだから、言う事は言わないといけないってね。
―なるほど。
Y 俺は一昨年に小規模ながらヨーロッパツアーをして東欧も含めてを回ったんだけど、一時期って海外に行くのに規制がすごく強かったよね。テロの後だったから飛行機に乗るにもすごく大変な時期もあったでしょ。まあ、俺が行った時はそうでもなくて、無事に3週間の旅を終えて帰ってきたんだけど、事ある毎にテロの予感だったり、旅をしずらくなったりすることが各国で起きてるじゃん。そういう危険は残ってるよね。安全に旅にも行けない。「中近東を気軽に旅できるのか?」っていうとそうじゃない。21世紀に入ってそういう危険が高まったのは事実。
―そうですね。